はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

母からの贈り物

2017-03-28 17:45:46 | 岩国エッセイサロンより
2017年3月25日 (土)
山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 大学進学とともに実家を出て、早いもので38年。いつのまにか親と過ごした年月より離れて過ごした年月の方が長くなっている。その間、どこに住んでも実家の母から段ボールに入った贈り物が届いた。「そっちでも売っているよね」と母は言っていたが、定期的に届くのが楽しみだった。
 昨年7月、母が急死した。「実家の母が亡くなって変わったと思うことはない?」と主人に尋ねたら、「ミカンが届かないね」と返答がきた。愛媛の実家からミカンが送られてくると、今年もこの季節がきたなとしみじみ感じていたので、何だか物足りない。農家ではないので、知り合いに頼んでわざわざ送ってくれていた母。毎年当たり前のように送ってくれていたが、本当にありがたかった。
 実家からの荷物を開けたときに手紙を探すわくわく感。下に敷いてあったり、間にはさまっている新聞を伸ばして読むのも楽しみの一つだった。今、母がしてくれたように娘に荷物を送っている。自己満足かもしれないが、楽しみにしてくれることを信じて……。
 (2017.03.19 愛媛新聞「てかがみ」掲載)

言霊を届ける

2017-03-28 17:43:14 | はがき随筆
 私のブログのタイトルは「ことだま日記」である。山寺での日々の出来事などを書き始めてから4年になる。知人や友人からの便りによく「ブログみています」と書き添えてある。不特定の人に伝達するのにブログはとても役立っている。一方、目に見えない人への伝達だけでなく、身近な人に直接伝える「言葉カード」の作成を最近始めた。「微笑みに優きれいな化粧なし」とか「晴れてよし、降ってよし、今を生きる」等々の言葉を筆ペンでB6大に書きファイルに入れ、できるだけ多くの人に手渡すことにした。みんなの心に言霊を届けるために。
  志布志市 一木法明 2017/3/29 毎日新聞鹿児島版掲載


あったもん生活

2017-03-28 17:35:41 | はがき随筆
 主人が1週間ほど家を空けることになった。少しずつ多くの種類のおかずを食べたい主人なので、解放がうれしかった。その日から〝あったもん生活〟が始まった。作りおきの南蛮漬けやキンピラ、手作りの佃煮。大好物の煮物をたくさん作って一品で過ごす自分が想像できた。
 過食快便が自慢だったが、4日目ごろから少しずつ変化が表れ、出なかったり、硬かったり。やはり作らされ食べされられて、季節を感じる食事で元気でいられるのがわかった。
 なんだかんだ言っても今年は金婚式。お互いに我慢と忍耐で、そのうえ健康のおまけつき。
  阿久根市 的場豊子 2017/3/27 毎日新聞鹿児島版掲載

白水仙

2017-03-28 17:26:21 | はがき随筆
 際立つ濃い緑の葉が空気にさえて好天の日の庭は春めく。スノードロップ? より堅い葉群だと思っていると、白い蕾が出て、やがて水仙の、それも芯まで真っ白な花が咲いた。在来の日本水仙の花が今年はなぜか少なかったので、白い花はうれしい。
 特にいろいろな葉が花になり、新鮮な黄色に目が覚めるような狭庭のあけくれである。加えて野草のホトケノザのワインレッドの小花、ケマンソウの紫、オキザリスのピンク等々。木の花も今朝からミツバツツジが開花しはじめて、いのちの芽出や開花を催す節となった。
  鹿児島市 東郷久子 2017/3/26 毎日新聞鹿児島版掲載

空元気

2017-03-28 17:12:17 | はがき随筆
 松林に囲まれた病院の小さな売店。壮年の男性が「今、検査の受付で、ペットボトルを2本持って来るように言われてね」と大股で入って来た。「どれがいいんだろう」。神妙な顔つきで収納庫をのぞいている。すると、レジにいた美顔の女性が歩み寄り「こちらの水も効きますよ~」と語尾を上げ、おどけた調子で言う。「あっ、そう。じゃこいつらと一緒に、きょう一日頑張ろうかな。ワッハハハ」と高笑いを響かせた。
 不安と緊張を抱え、検査に向かう男性。その心情を察知し、ユーモラスに対応した女性。
 人生、時に空元気も必要だ。
 鹿児島市 平原博 2017/3/25 毎日新聞鹿児島版掲載


再会の喜び

2017-03-28 17:11:35 | はがき随筆
 毎日新聞読者の皆さま、こんちには。
 8年前に配達所の都合で配達ストップになり、皆さまとの縁が切れ寂しい思いの中、久しぶりに毎日にめぐり合い、3月1日より愛読しています。
 はがき随筆が懐かしく、仲間に入れてもらいたいと思います。しかし、長いペン休。体力、能力の衰退で読み書きが苦になります。 
 わずかに残る勘を引き出して時々投稿いたします。どうぞよろしく。
  霧島市 楠元勇一 毎日新聞鹿児島版掲載 2017/3/24