はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

投稿新たに誓い

2018-05-04 17:13:14 | はがき随筆
 5月5日に、こどもの日は私の誕生日です。烏兎匆々、97歳になり夢でも見るようです。
 現役時代のOB会名簿では長寿方1位、毎日ペンクラブ熊本でもトップ。市老連文化祭の書、絵、手芸品の出品者213人中、上から2番目でした。投稿も遠慮せねば恥ずかしいような気も出ました。
 ところが本欄も宮崎、鹿児島、熊本3県の広場になり、他県の方の作風に興味が出ました。宮崎市の田上蒼生子様は先輩で、その健筆「窓からの景色」を読み、明るく若々しい風情にもろもろの悩みも飛び、心新たにして頑張ろうと思いました。
  熊本市中央区  田尻五助  2018/5/3 毎日新聞鹿児島版掲載

おまけ

2018-05-04 17:03:43 | はがき随筆
 せっかく新潟に来たのだからと、魚沼産のコシヒカリを我家と娘宅への土産に買った。3合パックを2袋。値段は普段買うコメの4.5倍した。
 同じ売り場にあった、あられの柿の種も2袋購入すると「おまけです」と、コシヒカリ1袋を追加。店主が「どちらからお越しですか」と尋ねるので鹿児島と答えると「私の女房が阿久根出身なので、もう1袋おまけ」してくれた。
 新潟商人は時代劇では「越後屋お主も悪よのう」と、悪徳商人の代名詞。このイメージを消すためではないと思うが、店のサービスぶりに感謝しきり。
  鹿児島市  高橋誠  2018/5/3 毎日新聞鹿児島版掲載

つわぶき

2018-05-04 16:53:02 | はがき随筆


 店先に春野菜が出始めると、春芽立ちの山菜も並びだす。我家の庭にも少しだけつわぶきが顔を出す。茎から葉っぱの先まで産毛に覆われて、いかにも柔らかそうな、すんなりとした面立ちで立ち上がってくる。
 私はそのつわぶきの少しの苦みと香りが何とも言えず好き。出そろうのを待って摘む。ほんの一握りの量だが、油あげと一緒に炒め煮にして食べるのがいい。正に一回限りの我家のつわぶきの味だ。〝おいしい〟と口元胃袋もニンマリとなる。
 のち、濃い緑の葉っ葉のもと、可憐な花をつけて一年を締めくくってくれる。
  宮崎県西都市  河野満子  2018/5/3 毎日新聞鹿児島版掲載

姉さん

2018-05-04 16:45:02 | はがき随筆
 玄関が開いた。「もうしもうたなあ」。「あら姉さんね。早くこたつに入って」と口と手で呼ぶ。姉さん102歳、私86歳。姉さんは6人兄弟の長男のお嫁さん。私は末っ子の嫁。
 同じ敷地に六十余年、隣同士で暮らしています。長かったようで短かったようで。寂しい思いをしたことは一度もありません。姉さんたちのおかげです。
 兄さん夫婦が言い争いをすると、兄さんの味方に。姉さんに代わって兄さんにいろいろ言ったから主人も困ったと思います。兄さん、ごめんなさい。姉さんと仲良くしています。まだまだ頑張ってね。姉さん。
  熊本県荒尾市  近藤徳子  2018/5/3  毎日新聞鹿児島版掲載

教え子たち

2018-05-04 16:38:10 | はがき随筆
 教え子たちの還暦同窓会に招かれた。本当にありがたい。
 私のクラスだった人たちは20人も着てくれた。特に特徴がなかったT君は、わざわざ岐阜から来てくれた。産業廃棄物会社の工場長をしている。「がんばって工場長までして立派になったね」と言うと「涙が出る」と彼は言う。熊本のL子さんは、短歌をしているという。「短歌が、短歌をたしなむ私とも、またつないでくれたね」と今後の交流を約す。
 至らない教師だったが、それでも、皆は、私を「先生!」と呼んでくれる。ありがとう。尊い教え子たち。
  鹿児島県出水市  小村忍  2018/5/3  毎日新聞鹿児島版掲載

夜桜の宴

2018-05-04 16:15:18 | はがき随筆


 河畔を潤している豊かな流れ宮崎の象徴(シンボル)大淀川の堤。並木桜の灯りの下で、宴がお開き。いざ帰ろうと立ち上がったら見事な桜と、川面に映えた夜景。久しぶりのほろ酔い気分に気付いた。どちらも大切にしたい。「帰りは危ないからタクシーよ」と、妻から念を押されていたが、歩いた。
 戦中育ち。もったいないと、手にしていた残りの缶ビール。スマホに持ち替えて、灯りに照らされた満開の桜と水鏡の逆さの橋と街の風景をバックに、自慢の自撮りを楽しんだ。ちょうどビールも飲み干し気分よく家に着いたら、妻に𠮟られた。
  宮崎市  貞原信義  2018/5/3  毎日新聞鹿児島版掲載

シャクナゲと先輩

2018-05-04 16:07:35 | はがき随筆


 今年も、赤からピンク、白へと流れるような淡いグラデーションのシャクナゲが咲いた。
 へぼカメラマンの私は2軒隣のご近所さんの庭先に、デジカメを持って押っ取り刀で駆けつける。一回りも先輩のその家の主に向かって、花に寄り添ってとか、もっと笑って、などとあれこれ注文をつけながらバシャバシャ、シャッターを切る。
 現役ゴルファーだけあって、背筋がビシッときまっている。何ごとにも前向きで、障害を物ともせず立ち向かっていく、彼女の凛とした生きざまにはいつも敬服している。飛び切りの良い写真が撮れたらいいな。
  熊本県菊陽町  有村貴代子  2018/5/3  毎日新聞鹿児島版掲載

孫娘の夢

2018-05-04 15:54:59 | はがき随筆
 寝転びテレビを見ている私の顔を、小さな手で寄せたり、引っ張ったり、鼻をつまみ上げたりして、声を出して笑いこけていた孫娘が4月には中学生になった。彼女に当時「大きくなったら何になるの」と聞いたら「ドラえもんをつくる人になる」と答えた。ドラえもんをよく知らない私は本を見せてもらい、ドラえもんの優しき心の持ち方に、私もドラえもんが欲しくなった。「さくったら、じいじにちょうだいね」と励ますと孫娘の瞳が笑った。時代は今、ロボットはAI化され進化している。ピッカピッカの中学生は、どんな新たな夢を見るのやら。
  鹿児島県出水市  宮路量温  2018/5/3  毎日新聞鹿児島版掲載

いとしき花

2018-05-04 13:46:54 | 岩国エッセイサロンより


2018年5月 4日 (金)
  
 岩国市  会 員   横山 恵子

 エッセー仲間のYさんから「昨年もらったエビネランが小さな花を咲かせたよ」と言われた。嫁入り先で大事に育ててもらっていると、うれしさもひとしお。エビの背のように見えるところからエビネランと呼ばれるようになったという。
 実は下関在住の時、亡夫が教えた子の親からいただいた思い入れのある花。季節が廻り花が咲くと、当時のことがいろいろと思い出される。
 日陰で、ひっそりと咲く。花言葉は「謙虚」「誠実」などとか。私ににている(?)と思うと、ますますいとしさが増してくる。
  (2018.05.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載)