はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

深謀遠慮

2019-11-05 12:10:26 | はがき随筆
 計画は昨年持ち上がった。大谷のホームランを見に行こうというもの。手術後、打者としての復帰は5月中との情報を聞き、計画を練ったのは3月末。地区優勝でライバルとなるのは、アストロズとアスレチックス。両チームとの対戦はシーズン最後。押し詰まった優勝争いの試合で、大谷のホームランが目に浮かぶ。よい席は早めにと計画後、手に入れた。出発日は9月24日、渡航費用も支払う。
 幸先よく、12日には48号ホームランを放ち、心はロスに飛んだ。なんとその翌日、左ヒザの手術で今季の出場は絶望と発表された。どうすりゃいいの。
 鹿児島県志布志市 若宮庸成(80) 2019/10/31 毎日新聞鹿児島版掲載

助かってます

2019-11-05 12:02:29 | はがき随筆
 姉と私の使っているパソコンのケアは、いつも友人の旦那さまにお願いしている。困った時にSOS発信すると即返信があり、ナナハンバイクで駆けつけてくれる頼もしい彼だ。
 先日、来てもらったとき「クーラーの効きが悪いんだけど」と専門外の相談をしてみた。みてもらったところ、びっしりと埃がへばりついたフィルターを見つけ、洗い流すとすっかり調子良くなった。ついでにと洗濯機の不具合を話すと首をかしげながら何かいじってこれまた直ってしまった。
 一家におひとりこんな方がいると本当に心強く思う。
 宮崎市 藤田悦子(71) 2019/10/30 毎日新聞鹿児島版掲載

「、」は1秒 「。」は2秒

2019-11-05 11:53:38 | はがき随筆
 ある研究大会で実行委員長の役をすることになった。当日は700名の参加者とご来賓の市長様方の前で挨拶をしなければならない。まず文章の文字を拡大。朱線を入れ毎日練習をする。
 孫たちに聞いてもらった。小2の孫が「ばあちゃん『、』読点は1秒、『。』句点は2秒の間をあけて、ゆっくり読みなさい」。小4の孫は「ロボット読みはダメですよ」と言った。
 学校での指導なのだろう。ご注意ありがとう。さて、いよいよ本番。ゆっくり、ゆっくりと孫たちの顔を思い浮かべながら、挨拶した。
 熊本県宇土市 岩本俊子(70) 2019/10/29 毎日新聞鹿児島版掲載

銀杏文庫

2019-11-05 11:35:31 | はがき随筆

 もう幾昔も前のこと、田舎の小さな小学校に勤めていた。校庭に一抱えもある大きな銀杏の木があり、季節になると大量の実が落ち、あたりがべとべとになっていた。地元の人たちはさほど関心はなさそうだった。もったいないと思い換金することにした。6年生男子に棒を持たせ登らせた。彼らは雀躍、猿のごとく登り、大量の実(銀杏)を落とした。思いのほか多額の収入になり、彼らと諮りそれを資金に「銀杏文庫」と名づけ図書室を設けた。おかげで文庫は年々充実し子供たちを育んだ。廃校になったそうだが、あの銀杏の木は健在だろうか。
 鹿児島市 野崎正昭(87) 2019/10/28 毎日新聞鹿児島版掲載

それでよし

2019-11-05 11:25:04 | はがき随筆
 奥上高地の山小屋には悪天候で登山を断念した人、人、人のため息が満ちていた。夫と私も河童橋から梓川沿いを上流へと3時間ほど歩いては来たものの3日分の荷物は肩に食い込み、これから先の予測は容易についた。ここで一泊しよう。
 夕食後、6人掛けのテーブルで私は空模様に思いをとらわれて残念さを抱え込んでいた。と同席の若者が「ご飯、僕がよそいます」と言って6人分を手際よく盛り始めた。はっとして私も立ち上がり、味噌汁を受け持った。漂う香り。雨の足止めだが心根のいい若者に出会えた。それでよし。さ、いただこう。
 宮崎県延岡市 柳田慧子(74)2019/10/27 毎日新聞鹿児島版掲載

待ち時間

2019-11-05 11:17:50 | はがき随筆
 病院の待ち時間の長さには、慣れているつもりでも相当辛いものがある。今時のシステム、名前の呼び出しはないが、ひたすらテレビ画面とにらめっこだ。
 全然番号が変わらない時は、難しい患者さんかなと一人で納得しようとひそかに努力。それでも長く待たされると、やはりいらつく。2時間待ち、診察3分だ。やっと相方の番号が出た。さっと診察、処置が終わり一安心して笑顔に。その後の書類待ちがまた40分以上。いかに閑な私でも待つ限界がある。
 とうとうしびれをきらして、受付に3回確かめた。もう。 
 熊本県八代市 鍬本恵子(74) 2019/10/26 毎日新聞鹿児島版掲載