はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

文学に親しむ

2022-09-28 11:51:45 | はがき随筆
 行水も日まぜになりぬ虫の声
 50年前の新婚の頃、夫の本を捲っていてこの句を見つけた。何とよく言い得ている事かと、この句との出会いがうれしかった。その頃、姉が毎週のように新聞の歌壇に載っていたので、私もと投稿してみたが全滅であった。自分には文才が無いのだと作るのを諦めて鑑賞する事に徹して来た。姉のように名首は残せなかったが、いい文学作品に出会う喜びは味わえたと思う。今朝、窓を開け、冷気と共に心地よい風を感じながら、ふと来山の句を思い出したのだが、さて、この句が載っていた本は誰の名の何と言う本だったかな?
 熊本市北区 井出リエ(76) 2022.9.28 毎日新聞鹿児島版掲載

灯下美人

2022-09-28 11:24:27 | はがき随筆
 「月下美人が今夜開きそうよ。昨夜も3輪咲いたけど、見てあげられなかったのよ。今朝さびしそうにしぼんでいたわ」
 夕食のテーブルについたら、カミさんが話しかけてきた。
 「それじゃあ今夜は家の中で咲かせたらどうよ」「そうね」
 カミさんはつぼみのまま月下美人を3輪切り取ってきて、口が横に広がっている花瓶に生けた。11時ごろ全開に近くなったので、カミさんは顔を近づけて深呼吸。「ああ、いい香り。月下美人も喜んでいるわよね」「月ではなく蛍光灯だから、灯下美人だけどね」。老夫婦は軽口を交わして眠りについた。
 鹿児島県西之表市 武田静瞭(85) 2022.9.27 毎日新聞鹿児島版掲載