「あ、またぷんかした」
朝の定点観測が日課だった3歳の息子は、桜島が噴煙をあげるたびにそう言った。一日どころか一刻に七色を変えるその姿を、彼は飽きずに眺めていた。
群雲が頂を隠せば、「桜島が壊れちゃった」と嘆き、「どうしよう」と応じれば、「大丈夫。すぐ直るから」と答える。弾むようなこどもの感性はぴかぴかだ。
彼の記憶に残るのは、きっと、灰に悩まされる洗濯物ではなく、陽光を照り返す岩肌だろう。そして、いつの日か、桜島のごつつよか二才(にせ)になるだろう。
鹿児島市 堀之内泉 2015/6/8 毎日新聞鹿児島版掲載
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