夜8時を過ぎた帰路は田舎道で真っ暗だ。対向車が通り過ぎざまにともしてゆく田んぼは、稲たちがゆれ、「お疲れさん」と手を振ってくれている。
「さあ帰ったらビールだあ」と気持ちは一直線になる。もちろん妻と二人の子供の顔をその前に思い浮かべている。ひとりで言い訳をしながら安全運転。
だが今日は「ぎょえっ!」となった。ライトで照らした歩道に、一瞬、先輩が見えた。仕事で疲れたはずの先輩が確かにウオーキングする姿だった。
翌晩から私もこっそり歩き始めた。真っ先に応援してくれたのは妻と二人の子供だった。
宮崎県都城市 平田智希(45) 2021.10.10 毎日新聞鹿児島版掲載
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