はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆8月度入選

2011-09-17 22:32:35 | 受賞作品
 はがき随筆8月度入選作品がきまりました。
▽出水市明神町、清水昌子さん(58)の「合歓の花」(4日)
▽肝付町前田、吉井三男さん(69)の「名言」(11日)
▽鹿屋市串良町上小原、門倉キヨ子さん(75)の「成長見っけ!」(17日)

──の3点です。

 8月のせいか、敗戦の記憶や過去を回顧する文章がかなりありました。まだ8月15日は日本人にとって一つの区切りのようです。同じように3月11日が、私たちの心に与えた影響の大きさは、果たして消える時がくるのかどうか。
 清水昌子さんの「合歓の花」は、おれんじ鉄道の沿線の景色を堪能するなかでも、阿久根市の合歓の花に、幼児の晴れ着を連想し、その連想から大災害で亡くなった幼児たちに思いを馳せた文章です。合歓の花を鎮魂の花という美しい見立てです。
 吉井三男さんの「名言」は、病院で置き引きを注意する看護師の、生活に困っているというより、働く意欲がなく、間違った意志と知恵があるだけだという「名言」に感心したという文章です。どうしても、思いは福島での空き巣の横行に走ります。人間の救われなさが悲しくなります。
 門倉キヨ子さんの「成長見っけ!」は、ジュニアパイロットで帰省した孫娘に、家庭菜園の野菜の料理を食べさせると、敵もさるもの、節電節水のエコライフを熱心に語り、帰りは野菜類を持ち帰ってくれたという、微笑ましい内容です。
 以上の優秀作の外に3編を紹介します。
 姶良市加治木町錦江町、堀美代子さん(56)の「メタボ症候群」(7日)は、夫婦そろって検診に引っかかったので、食事を減量して、その節約額を震災地の募金にしている。効果が現れ、一石二鳥と喜んでいるという内容です。
 出水市下知識、塩田幸弘さん(63)の「泣いたトロンボーン」(10日)は、50年前集団就職の先輩たちをトロンボーンの演奏で見送った思い出です。現在の豊かさを実感するにつけても、関門海峡を越えるまで、すすり泣きが聞こえたという話を悲しく思い出すという内容です。
 同市上知識町、年神貞子さん(75)の「万華鏡」(14日)は、美しい文章です。こどもの時から万華鏡を作ってみたいという願望が、小学低学年のサンデイ・サイエンスに参加して、やっと実現した。昔の色紙の小片のと異なる、光の屈折で起こる多彩な模様を楽しみ、かつ、時の流れを感じたという内容です。
 (鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)

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