はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆2月度

2019-03-09 16:29:59 | 受賞作品
 月間賞に道田さん(鹿児島)
佳作は柏木さん(宮崎)、口町さん(鹿児島)、竹本さん(熊本)

 はがき随筆の2月度月間賞は次の皆さんでした。(敬称略)

【優秀作】28日 「真心」道田道範=鹿児島県出水市
【佳作】8日「霧の記憶」柏木正樹=宮崎市 
    7日「80代は」口町円子=鹿児島県霧島市
    10日「教え子の行為」竹本伸二=熊本市東区

 「真心」は、母親の介護に、心身ともに疲労困憊している毎日。反応の全くない母親の様子に、感謝の言葉など期待していなかったが、感謝の念を姉には伝えていたことが分かり、真心が通じたと勇気づけられたという内容です。人の意識の動きの不思議さについて考えさせられました。私たちの生命現象は一般に意識の活動としてとらえますが、筆者の毎日の会後は、人の命の不思議さに対面させられていると考えると、他人事のような言い方になりますが、介護も別の意味合いをもってきて、励まされるかもしれません。
 「霧の記憶」は美しい文章です。蜘蛛の巣に輝く朝霧の水滴に、少年時代の父母の記憶を重ね合わせた内容です。牛馬のごとく、という慣用句がありますが、早朝から草刈りに出ていて、待っていると朝霧の中から帰ってきての食事。安堵感がある記憶です。父母の年齢に近づくと、父母の労苦が分かるといいますが、このような懐かしく美しい連想は読む人の気持ちを和めてくれます。
 「80代は」は、ワサビり効いた文章です。誰でもが大みそから「紅白」を見る義理はありませんから、自信をもってください。歌が好きなので「紅白」が楽しみだったが、最近は理解不可能な番組に。歩み寄る気持ちで見てみたが、やはり駄目。犬猫のテレビは和ませてくれるのだが。これからは自分流を貫こう。80代の再出発と言おうか、自己の確率です。頑張って下さい。
 「教え子の行為」は、高校教師時代の教え子が、70歳の頃訪ねてきて、危ない個所に手すりを付けてくれた。「今はいらんでしょうが」という心配りと共に。それから20年、これほど助かることはなく、毎日感謝している。教え子の行為が好意であったようです。ここではいわゆる子弟の間柄ですが、人と人との善意の触れ合いは、それが他人事でもうれしくなります。
 この他に、夫婦で別室でテレビを見ている生活が内容の、楠田美穂さんの「TV別居」と、赤ん坊が心を慰めてくれるという、内平友美さんの「心のサプリ」が記憶に残りました。
  鹿児島大学名誉教授 石田忠彦

最新の画像もっと見る

コメントを投稿