藺草の収穫が終盤を迎え八代平野は青い香りに満ちている。おとなの背丈ほどの藺草は濃い緑色で風になびく様が美しい。農家の刈り取り作業は早朝4時に始まる。一定量の草を束ね、その都度泥染めと乾燥を施しながら1カ月、盛夏の労に汗を流す。日照りも雨も休みなしだ。この藺草で織られる畳表には一畳あたり約7000本の草が使われていて、畳の吸湿性とクッション性が評価される所以だ。産地に住む我が家はほぼ和室。されど寝室にはベッド、茶の間と座敷にはソファを置いて寛ぎ、自由に選択して暮らしている。初秋に出る新畳が楽しみだ。
熊本県八代市 廣野香代子(55) 2021/7/17 毎日新聞鹿児島版掲載
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