はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

物の価値

2009-12-28 17:50:12 | 女の気持ち/男の気持ち
 それは仕事中に実感したことである。
 プラスチック部品を検査していて、「この後の工程はメッキ塗装です」と聞かされたのだ。   
 釣り竿の部品らしいその検査品を眺めながら、私はなるほどなあと思った。「こんなに小さな部品にまで塗装を施し、それを組み立ててようやく立派な釣り竿になるんだもの。釣り竿って高いはずだよね」と納得したのだ。
 その時、建具屋の主人が常日ごろこう力説しているのを思い出した。
 「家具にしろ、建具にしろ、高いと言われるが、それだけの手間、材料、運賃がかかっているんだ。それらのすべてがその物の価値なんだよ」と。
 物の価値って深いなあ。今、安ければよいという流れになっているけれど、商品の一つ一つにさまざまな人たちの手がかかっているのだ。
 厳しい経済情勢が続いている時世だからこそ、消費者として見知らぬ人たちの生活も支えている一人なんだと思いながら買うことにしたい。
 皆苦しいのだ。そんな心が、ほんの少し生活を豊かに変えてはくれまいか。そう思う今日このごろ。
  山口県萩市・パート 田邊 栄・46歳 200912/24 毎日新聞の気持ち欄掲載

最新の画像もっと見る

コメントを投稿