友人が送ってくれた手作りマスクを着けて鏡の中の自分にニンマリする。マスクを着けた顔は当然のことだがマスクが一番、目に付く。
目立ち始めた口元のしわも控えめな鼻も全然見えない。目立つのは白髪に映える、淡く明るい色柄のガーゼハンカチマスクだけ。布のカットの具合で鼻も少々、高く見える。
友は私という人間をよく分かっている。さすが、付き合い46年。オヒョヒョヒョヒョだ。
どこかの無精者は、常々扇で顔を隠せる平安時代の姫君を羨ましがっていた。あれなら化粧をサボろうが、雑に済まそうがOKだ。
紫式部の時代から1000年あまり。待てば海路の日和あり。新型コロナの感染予防でマスクが必要になり、煩わしいと思っていたが、効用もあるじゃありませんか。
フッフッフ。マスクの色柄のお蔭で目も生き生きして見えるような……。指で押すとフニャッとくぼむ上げ底鼻に、ちょっと詐欺かもという気もするけれど。
なんの、別に誰かをだますわけではない。何の努力もせず、マスク美人になれた? と思うと気分がいいのだ。さて、こっちもお礼にサバイバルグッズでも送ってやろう。
一緒に送られてきた黒猫模様のバッグを袈裟懸けにして美魔女になったつもりの私は日傘を片手に外に飛び出した。自転車に乗って薫風と共に気分は舞い上がる。どけどけカラス。マスク美人が通る。
北九州市小倉南区 吉田典子(59) 2020/6/23 女の気持ち掲載
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