はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆特集「風」-8

2009-09-21 20:04:36 | はがき随筆
「秋の風」
 休診の土曜日の午後、明日投稿の短歌を作り終え、たそがれの庭に出てみる。
 赤く熟れた柿がいっぱい実った梢でふと法師ゼミが鳴き出し、今までと違った風が肌につめたく流れ始めてきた。庭の隅を見ると、彼岸花が芽を出し、そこに秋がきていた。秋の風は忙しい。
 妻を失って6ヵ月。はじめての秋は風がつめたく寂しいと言うがほんとうなのだろう。一人になってこの秋をどう生きるか、風の冷たさが身にしみてくる。
 老いて一人、つめたくなった風を浴びながら、秋から冬の寂しさに耐えて生きたいと思う。
   志布志市小村豊一郎(83) 2009/9/21 毎日新聞鹿児島版掲載

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