はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

心の中の父

2017-06-11 20:17:10 | 岩国エッセイサロンより
2017年6月 9日 (金)
岩国市  会 員   樽本 久美

もうすぐ父の日がくる。4月に父が亡くなったので、デパートで今年は、何を贈ろうかと考えることができない。寂しい。でも、父は私の心の中にいる。生きている時とは違った感覚。
 最近、仏様の本を読んでいる。今まで何にも知らなかった作法や死後の世界。「毎日生きているのが当たり前」のような生活をしていた私。父の死で今日の大切さを痛感している。「今日できることは、今日やろう」。明日の命は、わからない。
 まだ、母が生きている。父の分まで母を大切にしたいと思うが、わがままな母。最近携帯電話を使うことになった84歳の母。何度も教えるが、なかなか使うことができない。年を取るとは、こういうことなのか?
 昔は、なんでもできた自慢の母であったが、今は……。私も通る道。我慢してもう少し、母に付き合うことにしよう。
 父はいないが、私の心の中にはいる。困ったことがあれば、南無阿弥陀仏と父の法名を唱えよう。周防大島が父の故郷。大島でも八十八ヵ所巡りができる。御朱印帳を持って巡りたい。観光も兼ねて大島の海と青い空を。
 事あるごとに父を思い出すが、前を向いて笑って生きていこう。そんな思いを込めた私の書作品を父のひつぎに入れた。
 小さいころ、あまりに落ち着きがない私に、書を習わせてくれた父。父の友人から書を習った。その先生も、今は、あの世で父と会っているであろう。私のことを見守ってくれているであろう。父の娘で本当によかった。ありがとう。合掌。
  (2017.06.09 毎日新聞「女の気持ち」掲載)

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