はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

月の光

2011-09-27 10:57:53 | はがき随筆
 月が縁側を照らし、伸ばした指の影が床に落ちた時、ふと、幼き日を思い出した。
 電灯を消した座敷で、障子の向こうから「コンコン」。父の声と同時にキツネの影が映った。それから鳥の羽ばたきや箸を使って船頭が船をこぐ影など父の手からうまれるさまざまな影絵を姉妹と次は何が現れるかと期待して見入った。影絵を習って遊んだり、月夜に表に出て、影踏みして走り回った事も浮かんだ。遠い子供のころである。
 時の流れ、今、影踏み遊びなど消えているように思う。庭に出て見た。月光を浴びた草木が神々しく神秘に見えた。
  出水市 年神貞子 2011/9/26 毎日新聞鹿児島版掲載

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