はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

1ミリの神秘

2007-07-16 08:51:11 | はがき随筆
 袋の中から手のひらに転がり出たタネは1㍉もない。去年から夏大根10本の収穫を夢みて、30粒のタネをまく。「さあ目をお覚まし」。土を軽くかけ、たっぷりの水をやる。畑の中のその場所が、その時よりいとおしくなる。何度ものぞきに行く。土を感じ、水を感じただろうか。今ごろ、かすかに動き始めただろうか。
 「ゆっくりでいいよ。ゆっくりで」土の中から、うっすら緑がみえるまで、私の心はとりこになってしまう。
 4日後、ぱっちり開いた双葉が両手広げて笑っているようにみえる。
   出水市 中島フヂ子(62) 2007/7/16 毎日新聞鹿児島版掲載

最新の画像もっと見る

コメントを投稿