秋といえば柿。直径5㌢くらいのコロンとした実がたわわである。オレンジ色に輝き、おいしそうに見えるが渋柿だ。
学校から帰ると祖母が「タデをずんばい(たくさん)採ってきやい」と言った。「あ、始まるな」。あおし柿の準備である。喜び勇んで川の土手へ一目散。
ひと抱え採って帰る。もう釜にワラのほか野草が入っている。煮汁を冷まし柿を浸す。数日後には程よい甘さに仕上がる。絶品のおやつだった。惜しいことにこの渋抜き法を誰も教わっていない。今でも赤い実を見ると「タデをたくさん」という祖母の声が聞こえてきそう。
鹿児島県鹿屋市 日高美代子(74) 2020/12/14 毎日新聞鹿児島版掲載
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます