はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

誕生日

2017-08-13 23:22:43 | 岩国エッセイサロンより
2017年8月 5日 (土)
山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 「諸人よ 思い知れかし 己が身の誕生の日は 母苦難の日」と書かれたバースデーカードを知人からもらった、母が30歳の時、帝王切開で私は生まれた。今は帝王切開で子供を産む人も少なくないが、当時は本当に苦難の日だったと思う。
 結婚してからも誕生日になると必ず「誕生日おめでとう。私が30歳の時の子供だから今年は〇歳だね」と電話をくれた。親子でお互いの年に30を足したり引いたりしながら相手の年を確認してきた。
 元気印で100歳まで生きるだろうと思っていた母の年が86歳で突然ストップしてしまった。母が亡くなったので、今年は電話がかかってこない誕生日になった。母の声が聞けなくて寂しいなあと思っていたら、3歳の孫の動画を娘がメールで送ってくれた。      
 「たんたんたんたん誕生日。ほんとにうれしい誕生日。大きくなあれ」。手拍子しながら一生懸命歌ってくれている。4月から幼稚園に通い始め、きっと幼稚園で歌っているのだろう。見ていると元気がわいてきて「ありがとう。体がこれ以上大きくなったら、デブばあばにになるので、心の大きなすてきなおばあちゃんをめざします」と返信メールを送った。
 母が亡くなった年まで30年。先日、娘が「おばあちゃんは何をやっても褒めてくれるね」と孫に言っているのを聞いた。褒め上手といわれた母に似てきたかな、とうれしくなった。母をめざしながら母の年を追いかけていきたい。
    (2017.08.05 毎日新聞「女の気持ち」掲載)

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