家の前の街灯からガチャンガチャンと音がした。「これはもしや」と近づいて見上げると、ほらやっぱりカブトムシだ。
ようやく足元に落ちてきたところで角をつまんで捕まえた。すると、夏の匂いが鼻をすうっと通り抜けた。
カブトムシの匂いが好きだ。幼少期の記憶がはっきりとよみがえる。夏休みには母の実家に泊まりに行ったものだ。酔っぱらって語り合う大人たちは楽しくて優しかった。
「じいちゃん、ばあちゃん、おばちゃん、今年の夏もまた会えたね」。目を閉じればすうっとよみがえる。夏の匂いに。
宮崎県都城市 平田智希(46) 2022.8.11 毎日新聞鹿児島版掲載
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