はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

分蜂

2020-06-01 18:13:45 | はがき随筆
 「お父さん、蜂!」。カミさんの声で庭に出る。すさまじい羽音でミツバチの群れが乱れ飛ぶ。庭木に止まると、たちまち乳牛のおっぱいの大きさに垂れた。
 「分蜂や」。幼い頃一度見たミツバチの巣別れだ。昔、蜜蜂を飼っていた父は巣箱を襲ったスズメバチに立ち向かい、刺された腕が丸太のように腫れた。以来私は蜂が怖い。
 「お父さん、これダメ?」。カミさんが出した殺虫スプレーを恐る恐るシュー。すると空高く長い帯となって飛び去った。
 「あほう、蜜蜂殺してどないする気や」。懐かしい父の声が胸をチクリ。
 宮崎市 柏木正樹(71) 2020/5/30 毎日新聞鹿児島版掲載

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