早春、垣根のマサキがいっせいに芽吹き、初夏には柿の葉の重なりの間からキラキラと木漏れ日がこぼれる。大きな大きなドウダンツツジは春にはスズランのような花が咲き、秋の紅葉は見事だった。
まめに庭師さんにお願いする余裕はなく、ただ草取りと落ち葉掃きに追われて55年。庭は老朽化し自身も老いてしまった。天をつくように伸びた木々と、草取りが遅れ花をつけた草、小鳥が肩先までおりて餌をついばんだ黒い土。私の大好きな風景で宝物だった。近い日、何もかも幻になる。みんなみんなありがとう。そしてさようなら。
熊本市東区 黒田あや子(89) 2022.3.19 毎日新聞鹿児島版掲載
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