朝の通勤時、横断歩道で信号待ちをしていた時のこと。その日は未明から本降りで道路には水がたまっていた。信号の待ち時間は90秒。傘をさした人々の視線は信号に集中している。
歩道の渡り口の少し後ろにベンチがあり、そのベンチの下に映えている草を抜く年配の女性を見つけた。通勤カバンからビニール袋を持ち出して草を入れる。慣れた素早い行動は、全く人目など気に掛けない。わずかの時間も大切に尽くすという生活信条のほんの一部なのだろう。
信号が変わり、背筋のピンと伸びた女性は確かな足どりで去っていった。上には上がいる。
宮崎市 杉田茂延(70) 2021.10.14 毎日新聞鹿児島版掲載
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