菜の花明かりの中に立って青空を見上げると、60年も前のあの日の記憶がよみがえってくる。当時私は、家から約30分歩き路線バスに乗って隣町の幼稚園に通った。
ある朝、バス停まで来て、あろうことかトイレに行きたくなる。周りは一面の田畑。小さな頭で考えた末、園児は菜の花畑に隠れて用を足した。パンツを上げて黄色い帽子が見上げた空は、菜の花の黄色と対照的にほのぼのとした青空。
次の瞬間、目線を下げた視界に、誰もいないバス停を通過して行くバスの後ろ姿が……。
あとは覚えていない。
久野茂樹 2013/5/6 毎日新聞鹿児島版掲載
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