はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

弟の涙

2018-05-02 11:19:03 | はがき随筆
 母の骨を納めた小さな箱の前で、弟は肩を震わせ子どものように声を上げて泣いた。
 彼岸の朝、母が旅立った。
 父亡き後、病弱な体で苦労して私と弟を育ててくれた。年老いていく母に、弟は時には自分が親のように何かと世話をし、晩年施設に入所してからも毎週欠かさず顔を出した。
 1月の入院以来深刻な状況が続き、弟家族が毎日見舞った。
 喪主の勤めを果たし、ここ数カ月の緊迫した日々から解放され、弟は「息子」に戻り心から母の死を悲しみ、涙したのだと思う。義妹と2人で、そっと弟の背中に手を添えた。
  宮崎市  平野智子  2018/5/2  毎日新聞鹿児島版掲載

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