はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

何とかなるよ

2018-05-03 21:43:40 | 岩国エッセイサロンより
2018年5月 3日 (木)

  岩国市  会 員   樽本 久美

 前向きな人と出会うと、こちらまで元気になる。たまたま趣味の会で知り合った86歳の女性。なんとなく馬が合い、いろいろな節目で、その人にアドバイスをいただく。今回は、私の方がアドバイスをした。
 手術を控えているHさん。今住んでいる有料老人ホームを出て、家に帰りたいと話していた。家では一人暮らしとなる。半年前に、家で転んで救急車で運ばれ、何とか命を取り留めた。子供は、遠くに住んでいるので、近くの親戚が頼りである。自由が大好きなHさん。さすがに、ホームの生活に不自由を感じているようだ。よくやってくれるホームであるが、やはり「家に帰りたい」と思う気持ちが強くなってきている。  
 私の母と同世代。娘の立場では、家に帰って1人暮らしをするよりはホームでの生活を勧めたいところだが、Hさんの日ごろの活動を考えて「好きなようにしたら」とアドバイスした。結局はホームに残ることにしたようだ。80歳からピアノを習ったり、真っ赤なドレスを着て社交ダンスをしたり、やりたいと思った時が「今」と思っているHさん。話していると、私も頑張らなくてはと思う。
 Hさんがいる老人ホームで、書道を教えていくことになった私。今まで後回しにしてきた、書道の先生に来年から挑戦していこうと決めた。今の仕事を辞めて、大変ではあるが少しずつ準備をしていこうと思っている。背中を押してくれたのはHさんである。「何とかなるよ」。お互い。

  (2018.05.03 毎日新聞「女の気持ち」掲載)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿