容体が不安定なので家族に連絡をとるように、と看護師が告げた。医者の丁寧な説明があった。主人は何か伝えたいのか、酸素マスクの唇は何かをつぶやく。家族にも伝えたい事が通じない。「悔しいね」「代われるものなら代わってあげたいが」。娘たちが「お父さん」とありったけの声を耳元で発するが、何の反応もない。今度は私が声を発すると、いささか閉じた目が細く動いた。「いつも聞きなれた声は素直に通じた」。病室のベッドの横には野球のグラブを置いた。主人が酸素マスクのままキャッチボールをする“夢”を見た。
姶良市 堀美代子 2015/6/22 毎日新聞鹿児島版掲載
姶良市 堀美代子 2015/6/22 毎日新聞鹿児島版掲載
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