はがき随筆1月度の入選作品が決まりました。
▽出水市高尾野町柴引、清田文雄さん(69)の「四海春」(6日)
▽霧島市国分福島1、楠元勇一さん(82)の「1秒の命」(20日)
▽鹿児島市真砂本町、萩原裕子さん(56)の「娘のチェック」(5日)
──の3点です。
1月分の投稿は、新年の抱負や心構えなどを記したものが多数でした。それが成人式風の「人生これからだ」といった元気のいいものではなく、投稿者の年齢相応に慎ましいというか、控え目なものが多く、同年配の私にもむしろ微笑ましく感じられました。
清田さんの「四海春」は、紫尾山からの日の出、ナベヅルのシルエット、不知火海、普賢岳などの壮大な景観のパノラマに、新年の多幸を願う美しい文章です。まさしく「謡曲高砂」の「四海波静かにて」の世界です。ただ、現在の日本が「国も治まる時つ風」と続いていかないところが気になりますが……。
楠元さんの「1秒の命」は、体調不良でこたつにしがみついていると、柱時計の秒針が気になりだした。その動きごとに自分の命が削り取られているように感じられる、という感慨です。私たちが生まれた時から死に向かって生きていることは理屈では誰にも分かっていることですが、このようにそれが情景として目に見えるという文章は、奥深いところで不気味です。
萩原さんの「娘のチェック」は、ご自分の文章を娘さんがこっそり添削したことに、娘の成長がう文章です。子供の成長はいろいろな形で見えてきますが、文章表現を通しての成長の実感はうれしいですね。
正月風景が多数でそれぞれ興味深いものがありましたが、次にはやや趣を異にするものを挙げてみます。
年神貞子さん『持ち前」(21日)は、ご主人がころ合いを見計らって、女性には苦手の包丁研ぎをしてくれることへの感謝の一文です。橋口恵美子さん「さらばイノキチ」(9日)は、畑を荒らす子猪を迷惑しながらも楽しみにして名前を付けてやったら、その途端に現れなくなったという話です。下市良幸さん「人生今が旬」(1日)は、福沢諭吉のいう「奉仕」の精神に心掛け、出来る時に出来る事を精一杯やる79歳の今こそが人生の「旬」だという、気持ちのいい文章です。
(日本近代文学会評員)鹿児島大名誉教授・石田忠彦)
▽出水市高尾野町柴引、清田文雄さん(69)の「四海春」(6日)
▽霧島市国分福島1、楠元勇一さん(82)の「1秒の命」(20日)
▽鹿児島市真砂本町、萩原裕子さん(56)の「娘のチェック」(5日)
──の3点です。
1月分の投稿は、新年の抱負や心構えなどを記したものが多数でした。それが成人式風の「人生これからだ」といった元気のいいものではなく、投稿者の年齢相応に慎ましいというか、控え目なものが多く、同年配の私にもむしろ微笑ましく感じられました。
清田さんの「四海春」は、紫尾山からの日の出、ナベヅルのシルエット、不知火海、普賢岳などの壮大な景観のパノラマに、新年の多幸を願う美しい文章です。まさしく「謡曲高砂」の「四海波静かにて」の世界です。ただ、現在の日本が「国も治まる時つ風」と続いていかないところが気になりますが……。
楠元さんの「1秒の命」は、体調不良でこたつにしがみついていると、柱時計の秒針が気になりだした。その動きごとに自分の命が削り取られているように感じられる、という感慨です。私たちが生まれた時から死に向かって生きていることは理屈では誰にも分かっていることですが、このようにそれが情景として目に見えるという文章は、奥深いところで不気味です。
萩原さんの「娘のチェック」は、ご自分の文章を娘さんがこっそり添削したことに、娘の成長がう文章です。子供の成長はいろいろな形で見えてきますが、文章表現を通しての成長の実感はうれしいですね。
正月風景が多数でそれぞれ興味深いものがありましたが、次にはやや趣を異にするものを挙げてみます。
年神貞子さん『持ち前」(21日)は、ご主人がころ合いを見計らって、女性には苦手の包丁研ぎをしてくれることへの感謝の一文です。橋口恵美子さん「さらばイノキチ」(9日)は、畑を荒らす子猪を迷惑しながらも楽しみにして名前を付けてやったら、その途端に現れなくなったという話です。下市良幸さん「人生今が旬」(1日)は、福沢諭吉のいう「奉仕」の精神に心掛け、出来る時に出来る事を精一杯やる79歳の今こそが人生の「旬」だという、気持ちのいい文章です。
(日本近代文学会評員)鹿児島大名誉教授・石田忠彦)
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