昔、農家では農耕用に牛や馬を飼っていた。小学生の頃、上級生の彦ちゃんの家によく牛を見に行った。彼の家は平地からおよそ100㍍、勾配は30度の坂の上にある。ここから牛を使って遊べたら面白そうだ。牛を連れだせないかと彼に相談する。困った顔をしていたが、家人が畑にいる間なら怒られないので、よいと言ってくれた。
いよいよ実行の日。2人は木のソリにしがみついて、牛を先頭に一気に坂を駆け下りた。我ながら無茶なことをしたが、幸いに誰にも目撃されなかった。無理を聞いてくれた彦ちゃんは数年前になくなった。
鹿児島市 田中健一郎(83) 2021/7/3 毎日新聞鹿児島版掲載
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