「お母さん退職したよ」
「……」
次は少し大きな声で「退職したよ」。「たいそうはせんよ」と返ってきた。
昭和63年に就職し、平成30年度で退職することにした。母は以前「あと何年ね?」とよく聞いた。その母も96歳。もう一度「た・い・しょ・く・したよ」。「たいしょく?」「そうそう。お母さんかいてくれたから勤められたよ。ありがとう」。私が頭を下げると「どういたしまして」。母も頭を下げた。
平成最後の桜の季節。病院の2階の窓から、母と2人で満開の桜を愛でた。
熊本県荒尾市 城島としこ(56) 2019/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載
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