夏の夜。思い浮かぶのが蚊帳である。もう見られなくなったが、中に入っていれば蚊に刺されることもなく、涼しくゆっくりと寝ることができた。蚊帳に入るときには上手に入るコツがあり、もたもたしていると「こら」とよくガラレ(叱られ)ていた。蚊を防ぐだけではなく、雷はへそをとる、遠くで雷が鳴り始めたら蚊帳の中に逃げこめば安全だと言われ、へそを押して信じていた。風情があって肌ざわりのいい麻の蚊帳と障子も開けっぱなしで、不思議な空間が好きだった。今、快適な暮らしのなかにいるが、それが温暖化などの負荷ともなっている。
鹿児島県さつま町 小向井一成(71) 2019/8/30 毎日新聞鹿児島版掲載
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