はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

薄翅天牛

2017-09-04 21:34:51 | はがき随筆


 先日、初めて夜の昆虫採集をした。カナブンやツノトンボ、ヒメクワガタも来た。そろそろお開きという頃、大きな虫がどさりと落ちた。大人の指ほどもあるカブトムシだ。長い触角をふるわせていたのはウスバカミキリだった。家に持ち帰ると、米に似た白い卵を産み、初めて虫の産卵を見る息子を驚かせた。翌日、おびただしい数の卵を残し、虫は動かなくなった。
 出産後に長い子育てが始まる人間と違って、多くの虫は親を知らない。それでも自然の中で彼らはたくましく継代していく。闇の中を迷わず飛ぶその力強さが羨ましくもある。
  鹿児島市 堀之内泉 2017/8/29 毎日新聞鹿児島版掲載

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