はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

青春の頃

2014-02-19 01:00:36 | はがき随筆
 私が40代の頃、小4と小2の兄弟に高3まで書道を教えた。毎年、賀状が届くので、はがき随筆文集と自筆の絵を送った。
 その後、携帯を入れたら、何と兵庫県で受信。「今、高校生引率で旅行中です。文集は毎日読んで涙が出ます。帰宅したら、京都土産を持参します」と。
 2人共、高校教師で活躍中。約束の夕方5時。鹿児島市から元気はつらつで来宅。心恥ずかしく、戸惑うことしきり。懐かしい青春の頃の思い出話は尽きない。仏壇に一礼帰路へ。そば粉、玄米、野菜を車上に笑顔で別れの握手。
 余韻は爽やかな風と共に。
  肝付町 鳥取部京子 2014/2/16 毎日新聞鹿児島版掲載

寿司桶

2014-02-19 00:52:13 | はがき随筆
 娘が小学6年の時、私の誕生日に寿司桶をプレゼントしてくれた。今年は、それで恵方巻きを10本作り、ご近所や知人に食べていただきよろこばれたこと、寿司桶を選ぶなんて冷めた小学生だよねと娘にメールした。
 詳細は覚えてないけど、抱えて帰った記憶はあります。冷めた性格は子供の頃から筋金入りだったんですネとの返信。
 24年前、包みを抱えて帰宅し、店のおばちゃんが「感心だね~」と褒めてくれたとほほ笑んでた。子供の僅かな小遣いをためてプレゼントしてくれたであろう寿司桶は、私の一生ものとなった。
  垂水市 竹之内政子 2014/2/15 毎日新聞鹿児島版掲載

アカツクシガモ

2014-02-14 17:57:54 | はがき随筆


 庭の梅が開いた。風もなく暖かい日差しに遠出したくなった。夫が鶴の越冬地に誘ってくれた。途中、道路脇の小川に沿って小道に曲がると、川縁の土手に赤褐色の鳥が首を羽に埋めて気持ち良さそうに日を浴び眠っていた。何と美しい鳥だろう。
 暮れに珍鳥アカツクシガモの飛来を聞いたあの鳥だろう。浅い流れに揺れる藻がこの鳥の餌場らしい。飛ぶ姿も見たいと思ったがその気配もない。静かにこの場を離れ、再び来てみると辺りをゆっくり歩いていた。
 くちばし、尾、足の黒色が赤褐色の羽を引き立てる。頭部は淡く、美しさに感動した。
  出水市 年神貞子 2014/2/14 毎日新聞鹿児島版掲載

足音の結晶

2014-02-13 22:24:54 | はがき随筆

 ブロッコリーがやっと大きくなった。昨年10月初旬、1本8円の小さな苗を200本余り植えた。
 例年、正月には食べていたが、今冬は厳しい寒さで気温が低く、生育が遅れていた。
 しかし、1月下旬からの暖かさで、グーンと大きくなりどんぶり大になった。大きくなるのを忘れていなかった。
 北風で倒れない土寄せと、元肥に追肥、除草に努めた。それに何よりも大切な「早く大きくなれ」と声(肥)かけの見回りが功を奏したのだろう。土と太陽と水の恵みに人の足音の結晶だった。感謝、感謝。
  出水市 畠中大喜 2014/2/13 毎日新聞鹿児島版掲載

10年日記

2014-02-13 22:16:15 | はがき随筆
 本屋の店員や鬼に笑われてもいい、とためらうことなく2冊目の10年日記を買った。
 この年で10年物に挑戦する訳とは――。はがき随筆であと100回は載り、県マスターズ陸上で金2,3個は取りたいという望み。身障者の妻に「先に逝くのは私」と宣言されたこと。先祖墓の処理など大事な務めがある。そのためには10年は生きたい……という思いと、自分の〝生命力〟を試してみたいという気持ちがあるからだ。
 長生きをするとつらく悲しいことが多いはず。それを定めと受けとめ、自分の生きざまや世相を日記に書き続けたい。
  出水市 清田文雄 2014/2/12 毎日新聞鹿児島版掲載

魚が陸へ上がる

2014-02-13 22:09:37 | はがき随筆
 30年前の2月上旬。内之浦の友人が「夕方、バケツを持って浜に行ってごらん。魚が陸に上がってくるから」。「えっ、そんな馬鹿な」。私は笑い飛ばしたものの、半信半疑、午後4時ごろ浜に出てみた。
 すると波が引く度に、7㌢くらいの多量の魚がピチピチ銀輪を踊らせている。夢中でバケツに放り込む。30分もしないうちに満杯になってしまった。
 後で話を聞くとこの時期、湾に大型魚が入り逃げ場を失ったカタクチイワシが浜に押し寄せて来るというのである。今はあの不思議な光景を耳にすることはないが、海は元気だろうか。
  日置市 高橋宏明 2014/2/11 毎日新聞鹿児島版掲載

イガ栗チクリ

2014-02-13 21:47:52 | はがき随筆
 一昔前、県立高校の生涯学習講座を受けた。約1年かけ日本画、陶芸、書道、合唱など月替わりで学んだ。俳句の授業で宿題が出たが、小学校の国語の時間以来、数十年ぶりの句作りに四苦八苦していたある日、裏の家の塀沿いにイガ栗が転がっていた。美しい緑色にひかれて思わず拾おうとした途端、指先に痛みが走った。「しまった」と思うと同時に1句できた。「手を出せば怒りあらわに栗のイガ」
 大喜びで提出したら合評会で先生から「俳句というより川柳ですね」。この一言で俳句のセンスの無さを自覚した私は、句作りを諦めた。
  鹿児島市 種子田真理 2014/2/10 毎日新聞鹿児島版掲載

流言飛語

2014-02-11 14:33:33 | はがき随筆
 高校受験と聞くと、私にも忘れられない話がある。
 当時、私は静岡県の大河天竜川の河口に位置する中学に通っていて、高校も同じ学区内の進学校を受験した。2日間、9科目芽の試験を無事終えた私は、多少風邪気味だったところに試験の疲れも出て翌日から2.3日欠席した。そして、その後出席したクラスで、私は妙な空気を感じる。何やら遠巻きにヒソヒソ話。ターゲットはどうも私らしい。後日、友が合った。試験に失敗した私が学校を休んだと……。世の中は怖い! 「流言飛語」という言葉を、その時初めて覚えたのだった。
  霧島市 久野茂樹 2014/2/9 毎日新聞鹿児島版掲載

「昼休みの児童」

2014-02-11 14:10:52 | 岩国エッセイサロンより
2014年2月11日 (火)

岩国市  会 員   片山 清勝

 給食を食べ終えた児童らは、広い運動場で生き生きと遊ぶ。追っかける子逃げる子、繩を回す子跳ぶ子。そして何十種類もの叫ぶような大声、でもけんかではない。そんな児童らの姿が好きで、立ち止まって眺める。
 昼休み終了の放送。すると、遊びに夢中だった児童らは間をおかずに、校舎へ向かって脱兎の勢いで一斉に駆け出す。その切り替えの早さに、素直な子どもらしい純朴さを感じ、自然と笑む。「こけるなよ」と思いながら、背中を見送る。
 少し舞い上がる砂ぼこりは、児童らの元気な声の余韻を楽しんでいるようだ。
   (2014.02.11 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

FMラジオ仲間の懇親会…

2014-02-08 22:55:55 | アカショウビンのつぶやき
 今日は、昨日とうってかわっての、ぽかぽか日和。
夕べはダウンコートやカイロを用意してたのに、
慌てて軽い物に変更。
場所は隣町の肝付町にある「温泉ドーム」。
 
 私がボランティアパーソナリティとして関わっている、
コミュニティーFM・FMかのやの懇親会でした。
 大変な下戸のアカショウビンは、
このような席は遠慮するんですが、訳あって今日は参加しました。


さすがに多士済々、皆さんのお話にふむふむとうなずくばかりのアカショウビンでした。


司会は、FMかのやのスタッフ・ねこすけさんとららちゃん。


FMかのやの局長さん。何とか今年も頑張れそうです…と。
財政事情は厳しいようです。


大雪の東京から駆けつけてくださいました。最後に飛んだ飛行機に乗れたそうです。


鹿屋体育大学のK教授。


さつま狂句を担当する、ひだかやんぶしさん。味がありますねえ。


こちらは、セラピスト。


アカショウビンの番組「心のメモ帖」になくてはならぬ、
編集者O氏です。
8年間お世話になりました。

今年いっぱいでアカショウビンは
ボランティアを卒業することにしました。
80歳が限界でした。

誰か、あとを継いでくれないかなあ

奇妙な年賀状

2014-02-08 22:28:55 | はがき随筆
 松の内も過ぎて、年賀状を整理していたら、心当たりのない賀状を見つけた。横浜のSさんだ。私は横浜に長年いたので、知り合いも多い。何か関わりのあった方と勘違いし、礼状を出したが、どうも腑に落ちない。
 実は2年前にも同じ経験をした。見知らぬ女性からの賀状で、先方に電話したら、向こうも驚いた。「調べてみます。送り返してください」と言われた。
 後日、横浜の知人から「義母から印刷を頼まれ、宛先を間違えた」と謝罪された。そうだ。2年前の賀状もSさんだった。「またやったね」といえば、知人も頭をかくに違いない。
  鹿児島市 田中健一郎 2014/2/8 毎日新聞鹿児島版掲載

楽しいいきさつ

2014-02-08 22:22:57 | はがき随筆
 デザートにプリンを出すと随友2人は極上物だという。「実は」といきさつを話すと2人は笑いころげ随筆に書けという。
 私の拙本のお祝いに歌の結社のNさんから贈り物が届いた。お会いしたこともない大先輩からこんなにいただけないと思い、サツマイモなどを送らせてもらった。すると孫も喜びましたと、またお礼をくださった。恐縮して私は畑の渋柿を「干し柿にしてください」と送った。
 さて、年末。おいしい干し柿ができて少しずつ食べるのが楽しみです、とプリンを送ってくださった。申し訳なく畑のきんかんを送らせていただいた。
  霧島市 秋峯いくよ 2014/2/7 毎日新聞鹿児島版掲載

星くずを碁石に

2014-02-08 22:16:27 | はがき随筆
 飄飄を献上したい友がいた。碁敵の1人であった。彼は対戦に勝つと、私をお弱い方と冷やかし、負けると、負けてやったぞとのたもうた。屈託ない笑いが持ち味だった。
 そんなひょうきんさの陰で彼の体に異変が生じていた。
 採光のよい病室に見舞った。彼は退院も近い、と明るく演じてくれ、艶話まで披露した。
 しかし、心配をかけまいとする試をあざ笑うかにように病は進んでいった。
 あっさりと彼は投了した。そこが天国なら、多分、星くずを集め、白黒の石をこさえているだろうな。待っていろよ。
  出水市 松尾繁 2014/2/6 毎日新聞鹿児島版掲載

おさい銭

2014-02-08 22:09:12 | はがき随筆
 日めくりカレンダーに「百円玉一ッぽんと投げて手を合わす。お願い事の多い事」とある。
 確かに。近くのお寺と神社の掛け持ち。願い事は商売繁盛、家内安全、宝くじが当たりますようにと盛りだくさん。
 一時体調を壊し、仕事を辞めた事もあったが、再稼働し商売も繁盛。御利益ありだが、宝くじだけが今年も下1桁だけの8枚2400円なり。「今年こそ」と連番、タテバラと頭をひねったのに。神様と仏様もむっかしいらしい。「いつの日か」を夢みて毎回買うことにする。おさい銭、消費税と共にアップするか、願い事を少なくするか。
  阿久根市 的場豊子 2014/2/5 毎日新聞鹿児島版掲載

「心の傷」

2014-02-08 22:07:36 | 岩国エッセイサロンより
2014年2月 8日 (土)


岩国市  会 員   山本 一

 同年配の仲間数人での忘年会で、お開きが午後11時ごろになった。お酒を飲まないマイカーの女性に「乗せて」とつい言ってしまった。乗車時、先客の便乗者があることを知り「やめようか」と迷ったが何も言わない。帰宅したら午前0時を過ぎていた。彼女は遠方なので1時近くになっただろう。申し訳ない。
 これまで「乗せてほしい」と自分から女性に頼んだことはなかった。膝痛で思うように歩けない。気力が弱り、つい安易に流れた。迷惑をかけたと思うようなことをしてしまうと、いつまでも心の隅がうずく。時々思い出してはつらくなる。
   (2014.02.08 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載