はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

心和む節分の願掛け

2014-02-08 07:32:19 | 岩国エッセイサロンより
2014年2月 7日 (金)


    岩国市  会 員  片山 清勝

 節分の夜、誰にも見られず、四つつじの真ん中に、年の数だけ豆を紙に包んで置くと願いがかなう。子どもの頃、祖母から聞いた節分のまじないだ。
 引っ越してきた家の前の小さなつじに、初めは10個ほどだった。願いがかなったのか、その数は少なくなり昨年は1個。
 今年もドアをそっと開けた。あった、2個。それは、これまでの無造作な置き方と違い、むつまじく寄り添うように置かれている。
 同じ願いを、真っ白な紙に包む2人の姿が目に浮かぶ。その包みを朝日が優しく照らしている。きっと願いはかなう、そう思った。
 各地の観光化した豆まきや恵方巻きを食べるなど節分行事も子どもの頃に比べ大きく変化した。
 そんな時代変化の中で、願掛けの風習が続いていることに驚く。裏通りの小さなつじだから、神秘的なことが続いているのかもしれない。そう思うと、驚きながらも、何か安堵する気持ちになる。 

   (2014.02.07 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

旅の思い出

2014-02-04 18:13:16 | はがき随筆


 夫の退職記念にヨーロッパに行き、
登山列車でスイスのユングフラウヨッホを目指した。
標高も高く、急ぎ足で歩こうものなら心臓がドキドキ。
「これが高山病?」と初体験。
展望台でホットチョコレートを飲みながら間近に見るアイガー、メンヒ、ユングフラウヨッホのベルナーオーバーランドの3山に圧倒された。アレッジ氷河も目の当たりにできた。
車窓から雪山をシュプールを描きながら滑走するスキーヤーを眺め帰途に就く。
幸運にも私たちは雲一つない青空に恵まれ、
素晴らしい景色に、まるで1枚の絵画の中に溶け込んだかのような錯覚さえ覚えた。
  鹿屋市 中鶴裕子 2014/2/4 毎日新聞鹿児島版掲載

「それぞれの20歳」

2014-02-04 18:11:31 | はがき随筆
2014年2月 4日 (火)

岩国市  会 員   山下 治子

 成人式の後「私の晴れ姿を見てください」と息子の恋人が突然やって来た。うれしいやら可愛いやら、振り袖姿に目を細める。彼女のお母さんが成人式の時にあつらえた物だとか。「姉たちもこれ着たんです」と屈託ないほほ笑み。
 素直な彼女に比べ、私の20歳はどうだ。一度きりの成人式ならスキー場で迎えたいと我を張り、母が縫った振り袖をよそに出かけてしまった。帰ると「友達が迎えに来たよ。みんなきれいになって」と責めるでなく着物をたたむ母。したたかな後悔がつきあがった。
 今更に思う。当たり前がよかった、と。
  (2014.02.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

春はセンバツから

2014-02-03 14:53:20 | ペン&ぺん


 久しぶりに「毎日新聞社に入って良かった」と心から思った。3月21日開幕の第86回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に、県内から私立上村学園(いちき串木野市)と県立大島高(奄美市)の2校が選ばれたことだ。上村学園は2年ぶり4回目。21世紀枠の大島は初出場で離島校としても初。県内からのダブル出場は21年ぶり。
 発表があった1月24日以降、会合や居酒屋で私の肩書きを知ると、大島高の卒業生が駆け寄ってきて「よくぞ選んでくれました」と握手を求められ、感謝の言葉をいただく。地元支局長に選抜出場の決定権はないが、こちらもうれしい。同校や奄美大島など島出身者は早速、喜びの宴会。多くの県民の皆さんがこの吉報を祝福している。
 選考委員会が選抜するため、支局の私たちは首を長くして待つのみだった。昨秋の九州大会で4強入りした上村学園でもフタを開けるまで分からない。九州の21世紀枠候補の大島だって確証はなかった。転勤の先々で、誰もが太鼓判を押す有力校が選抜から外れるのを何度も見てきた。選抜に関して「絶対大丈夫」とは言い切れないのだ。
 高校野球を担当する土田暁彦記者からは上村学園の厳しい練習や取材時の高校球児らしいさわやかな対応を聞いており、好感を持っていた。大島も高額な交通費や練習相手の不足など離島のハンディがある。島全体が元気になるよう「何とか行かせてあげたい」と念じていた。だから、本社から連絡が入った時、私も思わず「ウルッ」ときた。支局員も手をたたき、握手しあって喜んだ。センバツを何度も経験した私だが、初めて「万歳!」と叫んだ。
 さあ、今度は本番の甲子園だ。選手や部員だけでなく両校の生徒、関係者もグランドで、そして応援席で「ファインプレー」をみせてほしい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/2/3 毎日新聞鹿児島版掲載

頑張れ

2014-02-03 14:47:40 | はがき随筆
 「新しい年が皆様に幸せを運んできますように、お祈りいたします」
 「(略)新しい事がたくさん訪れる年なので、不安もありますが、とても楽しみです」
 年賀状を読みながら、ホッと心が温かくなった。言葉とは不思議なものだ。
 新しい年の幕開け。それぞれの場所でそれぞれに希望を持って新たな一歩を踏み出す。楽しいことばかりではない。つらいこともあるだろう。でも頑張れ、頑張れ。きっと乗り越えられる。前に向かって進んでいこうとする若い力に、私は元気をもらった。ありがとう。
  屋久島町 山岡淳子 2014/2/3 毎日新聞鹿児島版掲載
              

すてきな着地

2014-02-02 20:57:00 | はがき随筆
 「厚い落ち葉の下のわずかに土を割った竹の子の尖頭を探すのはウルトラCだぞ」
 大みそか午後3時、帰省していた東京の娘夫婦と福岡の娘夫婦を連れて、予約していたHさんの竹林へ行った。竹の子の探し方を話して入るとすぐに「これじゃない?」と東京娘。落ち葉を払って見ると間違いない!
 丁寧に掘り出すと、小さいが重量感のある立派な竹の子だった。その後、5人は各自平均3本を掘り出した。
 夜、正月用を除き、火鉢で焼いて食べた。「あっ、いい香り!」初体験の味を加味したすてきな1年の着地となった。
  出水市 中島征士 2014/2/2 毎日新聞鹿児島版掲載

「同級生」

2014-02-02 17:49:56 | 岩国エッセイサロンより
2014年2月 1日 (土)

     岩国市  会 員    樽本 久美

 最近、中学時代の同級生との再会が多い。何となく中学時代は楽しい思い出がなく、毎年同窓会の案内をもらうが、欠席していた。
 同級生の活躍を知り、仕事で取材させてもらうことになった。新たな取材先を探すのに困っていたら、偶然別の同級生と再会。その人が他の人を紹介してくれた。そこに行くと、更にまた別の同級生がいた。現代版の「わらしべ長者」である。同級生がいろいろな場所で頑張っている姿を見ることはうれしい。人はみんなつながっているのだ、と痛感した
 今年は、同窓会に参加したくなった。
  (2014.02.01 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

耳飾り

2014-02-01 12:48:06 | はがき随筆
 ケースを開けると思い出のイヤリングが入っていた。あるコンクールで受賞した時に夫からのプレゼントだった。
 「お祝いに何か」と夫に勧められ、1人でデパートへ出かけた。ショーケースの中に見たのは淡いブルーとピンクのマベ貝のイヤリングで光沢があった。
 「わーすてきですね」と言いつつ、見た正札に頭がくらくら。これはとてもムリだと諦めかけた時、「お取り置きしましょうか」と言われた。
 そしてその商品がお祝いの贈り物となった日の事を思い出す。亡き夫の愛を感じつつ、耳飾りをつけて鏡に向かってみた。
  鹿児島市 竹之内美知子 2014/2/1  毎日新聞鹿児島版掲載

遠い日の正月

2014-02-01 12:25:46 | はがき随筆
 コドンの頃、ショガツは「マコ回し・タコ揚げ」など楽しかった。一番の思い出は、母方の実家での「ショガッデ」。親戚一同での賑やかな宴。無口な父ちゃんが「チッタ ヨクロタド」とテコ、シャンセンに踊り出すと宴は最高潮。父ちゃんがショチュは「2合までがダイヤメ。それ以上宴会」と言っていたので、僕はこら! なごなっどお~と「ゴッソ」に夢中になっていた。他にナンカショガツ、鬼火焚きホダレヒキなどと正月気分があったが、31日の「送り正月」で正月もこれで終わる。風情のあったあの正月を今でも懐かしく思い出す。
  さつま町 小向井一成 2014/1/31 毎日新聞鹿児島版掲載