はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

大根

2016-12-19 21:32:30 | はがき随筆
 大根大根というけれど、やはり旬の大根が一番おいしいのはしかり。夏ものは品も少ないし味もまさに夏様だ。
 しかし、葉ものをはじめ不作で高騰する中で、やっと小さいながら大根さまを1本買った。そしてみそ汁の実にあてる。しっかりしただしの味が大切だから、ダシジャコでダシを濃いめにとり、きのう買った好きなみそを、大根の味をそこななわない程度に入れて出来上がり。
 おお大根の味が程よく、大成功!
 ナーンテコッタ、私にもこんなおいしいみそ汁ができるのだと感謝と自信――。
  鹿児島市 東郷久子 2016/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載


サプライズ

2016-12-19 21:25:57 | はがき随筆
 夕暮れが早くなり、外も真っ暗になった閑寂の中、音を立てて宅急便がやってきた。孫娘の名前に「ん?」と思いながら、包みを開けるとびっくり。そして胸がいっぱいになった。
 大学に通いながら、今年の夏に独り暮らしを始めた孫娘。遠くなり一層の寂しさを感じていた。生後すぐに実家にきた初孫で成長を見てきた。明るく活発で夢に向かって奮闘中である。
 中味はふかふかのパジャマ。〝寒い冬を温かくして乗り越えてね〟の言葉を添えて。アルバイトしながら頑張っているらしい。思わぬやさしさに触れ、涙がこみ上げあふれ出た。
  出水市 伊尻清子 2016/12/11 毎日新聞鹿児島版掲載

雨天の花火

2016-12-19 21:19:34 | はがき随筆
 肝付町の花火大会は、10月15日(土)と決まった。広告や宣伝が配布され、その日を待ち望んだ人も多かったと思う。当日になり、折悪しく朝から一日中の雨。でも午後7時半、主催者の方たちが元気いっぱいの声で、打ち上げを開始。闇空に火薬の爆発する音が大きく響く。
 七色の光は美しい花模様となり、人々の心を活気づける。
 我が家は、状況が一目瞭然の特等席。今年は観客の声や車の移動が少なく、豪華絢爛の花火に申し訳ないような気がした。行事が無事終了し、辺り一面静寂になった。活躍された花火師や関係者の方に感謝します。
  肝付町 鳥取部京子 2016/12/10 毎日新聞鹿児島版掲載


努力にメダルを

2016-12-19 21:12:01 | はがき随筆
 リオ五輪、柔道の大野将平は優勝の瞬間ガッツポーズをとらなかった。また陸上四百㍍リレーで世界最速のボルトは2位の日本チームに近寄り握手し、笑顔で写真に収まった。この見事な情景に拍手を送った。
 どの分野であれ一流の人たちの成果は一流の努力の結晶であろう。運が左右することもあるのだろうが、努力の積み重ねは不動のものであり、皆同等である。選手たちはそのことを承知していることと思う。小生、教職にあったころ生徒たちに「人の値打ちはその努力によって決まる」と説いたことを思い出す。
  鹿児島市 野崎正昭 2016/12/9 毎日新聞鹿児島版掲載

女優魂

2016-12-19 21:04:45 | はがき随筆
 市民劇場の10月例会は劇団民芸の公演。九州各地をひと月半くらいかけて巡演する。会員は3ヶ月前から準備を始めた。
 まもなく九州に移動するという時期に劇団から衝撃のニュースが飛び込んだ。主役の奈良岡朋子さんが肋骨を折ったという。「すわ、公演中止か」と青ざめた。しかし、である。10日程度の入院のあと、コルセット着用で稽古に復帰したという続報に安堵する。だが87歳という年齢を考えると不安は残った。
 公演当日、舞台に凛と立つ姿に胸が熱くなり、会員を増やして迎えられた喜びもあり、惜しみない拍手を送った。
  鹿児島市 本山るみ子 2016/12/8 毎日新聞鹿児島版掲載


はがき随筆11月度

2016-12-19 20:56:50 | 受賞作品
 はがき随筆11月度月間賞は次の皆さんでした。

 【優秀作】30日「変わりました」口町円子=霧島市国分中央
 【佳作】4日「今言える」中島征士=出水市武本
 ▽「吹奏楽部」塩田幸弘=出水市下知識


 「変わりました」は、料理に鋏を使う話です。若い人が使うのに、初めは抵抗があったが、使ってみると便利で、最近では当たり前のように使っている。世の中の変化になじむのに違和感を持ちながらも、次第に変わっていく自分の生活を、客観的に観察されているところが、落ち着いたよい文章になっています。
 「今言える」は、若いときにはいろいろの希望があったが、なかなかかなえられず、結局はへき地の中学教師に落ち着いた。ところが、恵まれた自然環境のなかで、伸びやかに生きる学生たちに、素直に生きることを教えてもらったという内容です。教えてやっているという段階は半人前で、教えてもらっていると気づきだすと教師も一人前のようです。
 「吹奏楽部」は、集団就職を吹奏楽で見送った悲しい思い出です。半世紀ほど前には中学卒が特別列車で都市部へ送りだされていった。それを、5㌔も離れた駅に楽器をもって見送りに行き、涙ながらに「蛍の光」を演奏した。現在の吹奏楽部員にあのときのような涙の演奏はさせたくない。実感です。
 この他に3編を紹介します。
 堀之内泉さんの「川幸彦」は、6歳の男の子は釣りがうまく、いろいろ教えてくれる。釣り上げた4匹のニジマスを4種類の料理にしてあげていると、「古事記」の世界に入り込んだ気分になり、我が家の海幸彦ならぬ川幸彦が喜んでくれたという内容です。
 宮路量温さんの「道」は、終戦後の困難な時代を、両親は自分を大事に育ててくれた。弟や親との死別もあったがなんとか自分の家庭を築いた。何の変哲もない道ではあるが、平凡なりに確実な足跡は残っている。このような穏やかな心境にはなかなか達せません。
 萩原裕子さんの「母と子のリレー」は、母の死後2週間目に子供が生まれた。亡母に孫の顔を見せられなかったと悲しんでいると、お腹の子が蹴って応えた。これはお葬式のときも同じだった。母と子に励まされながら、私も亡母の年齢に近づいてしまった。
 鹿児島大学名誉教授 石田忠彦


すてきになあれ

2016-12-14 22:08:44 | 岩国エッセイサロンより
2016年12月11日 (日)
山陽小野田市  会 員  河村 仁美

 2歳の孫娘はおしゃまで、いろいろなことをして楽しませてくれる。先日は「すてきになあれ」と言いながら、くるくる一回りして拍手喝采。  
 まもなく忘年会。食欲の秋のつけで現在体重はマックス。どう考えても今からでは、ダイエットは間に合いそうにない。化粧をしたところで、土台が土台なので、どれだけ化けられるか自信がない。そうなれば、心だけでもすてきな女性になろう。
 孫のように軽やかに回転することはできないけれど私なりに回ってみよう。さあ衣装を着替えてから玄関の前で一回り。  
 「すてきになあれ」
(2016.12.11 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

懐かしい発動機の音

2016-12-13 20:33:46 | はがき随筆
2016年12月13日 (火)
   岩国市   会 員   片山清勝

 近くのフェスティバル会場の一角から、ボツ、ボツ、ボツという懐かしい音が聞こえる。子どもの頃、農家の庭や田んぼから聞こえてきた発動機の規則的な音に引かれ、立ち寄った。
 野ざらしの発動機があると聞けば、保存会員は軽トラックで収集に向かい持ち帰る。それを分解、整備し不足する部品は手作りしてよみがえらせ、展示したという。
 昭和20年代から30年代半ばに活躍した機種で、それぞれに詳細な説明が添えられていて参考になる。
 どれも農業用で2、3馬力。単調だが懐かしい駆動音に体が拍子を取る。農家の人が、そんなリズムに合わせ、忙しく働いていた様子が思い浮かぶ。
 その後の農機具の進歩は農業の労力を大幅に軽減し、農業の機械化を実現させた。
 展示は、発動機を使って昔ながらの石臼を動かす仕掛けで大勢の人を引き寄せた。子どもとじっと見入る女性は、祖父母の姿をしのんでいるように思えた。

     (2016.12.13 中国新聞「広場」掲載)

仕 事

2016-12-11 01:06:35 | 岩国エッセイサロンより
2016年12月10日 (土)
      岩国市  会 員   吉岡 賢一 

  95歳を過ぎたころから、母の認知症は徐々に色濃くなってきた。週に1日でもいい、介護を忘れるゆとりがほしい同居人は、母をデイサービスに行かせることにした。
 簡単に「うん」とは言わない。手を変え品を変えて勧めるが「わしゃ、ここが一番ええ、留守番もせにゃならんし、どこにも行かん」の一点張り。
 働き者で仕事大好きだった母は、家にじっとしているのも「留守番」という仕事をしているつもりらしい。そんな母を口説くキーワードは「仕事」の二文字だと悟り、「仕事に行くと思って行ってみんさい、面白いところよ」と勧めた。
 案の定その気になってくれた。通所が始まってしばらくしたある日、デイサービスから帰った母が「今日の仕事は楽じゃった、タオルを畳むだけよ」とうれしそうに話した。それから数日後、「給料はいつもらえるの?」と大真面目に尋ねる。これは返事に困った。
 もの忘れは結構激しいのに、「仕事に行くと思って」と勧めたことだけはちゃんと記憶している。その上、仕事をしたのだから給料がもらえるという原則も忘れていない。
 なんだかんだ理屈をこねて、給料はもらえないと説明したが納得した顔ではなかったような。息子夫婦がネコババしたに違いないと思ったのだろう。
 101歳で逝った母の8回目の祥月命日を終えた。8年たった今も仏壇の向こうで「ネコババされた」と思っているのだろうか。同居人は分か悪いね-。
      (2016.12.10 毎日新聞「男の気持ち」掲載)

高齢者の運転 医師は忠告を

2016-12-11 01:04:49 | 岩国エッセイサロンより
2016年12月 9日 (金)
岩国市  会 員   安西 詩代  

 年が近々70歳に到達する運転者が免許更新する際に義務づけられている高齢者講習会に参加した。歩道に人がいる時に停車しなかったり、ブレーキを踏むのが遅れたり。若い時と達うと自覚した。 
 「運転の危うい高齢者に運転をやめた方が良いと助言しますか」と教官に尋ねた。「それはできない」という。
 来春から、免許更新の際、認知症が疑われた75歳以上の運転者に医師の診断が義務づけられる。だが、運転が危ないのは認知症の人だけではない。
 友人は70代後半のご主人に運転をやめるよう繰り返し頼んだが、拒まれた。やむなく主治医に頼み、「やめたほうがいいですね」と言ってもらった。すると、ご主人はすぐに車を売却されたという。
 そのように言える人は限られる。医師など、忠告できる立場の人は著しい判断力の低下が見られるなど、危険運転しそうな高齢者に運転をやめるよう勧めてほしい。
      (2016.12.06 朝日新聞「声」掲載)

思い出に生きる

2016-12-10 16:02:31 | はがき随筆
 職場の先輩が「老いとは若き日の思い出に生きる」と言ったことを今、実感する。4年前、市の催す会で、小学生の頃作りたかった万華鏡を作り、回す模様の美しさに感動、あの頃の自分に帰ったようだった。
 子供の頃見上げた夕焼け雲の美しさに「あの雲を空から見たらどんな景色だろう」。退職して中国を旅した帰路、北京で搭乗、紅色に染まっていく雲海の美しさにぼうぜんとなった。夕焼け雲の上の飛行は今も脳裏にある。今年は栽培してみたかった大きなスイカの収穫。まだまだ若い頃にできなかったことを追い掛けている。
  出水市 年神貞子 2016/12/7 毎日新聞鹿児島版掲載

出水筋残跡

2016-12-10 15:55:07 | はがき随筆
 残念ながら、雨にたたられた妙円寺参りでしたが、これで3年連続、紫原から徳重神社まで歩いた。4か所の関所でスタンプをもらいながらのウオーキングをした。
 この国道は通称薩摩街道であるが、T化成工場からは工場敷地内を通ってゆく出水筋残跡である。その工場敷地の一角で社員数名が無料接待されており、温かいお茶とラッキョのおいしかったこと。
 この古道には茶屋跡の看板もあるが、先ほどのおもてなしに感謝しながら、約2㌔の田舎道を歩いて、再度国道に合流した。
  鹿児島市 下内幸一 2016/12/6 毎日新聞鹿児島版掲載

野菜の高騰

2016-12-10 15:46:48 | はがき随筆
 近年の異常気象と相次ぐ災害には驚く。夏から秋にかけての台風被害に収穫間近の米農家など生産者は多大な被害を被った。親戚にはソラマメ、オクラ農家があり決してひとごとではなかった。何と声を掛けてよいのか、あらがえない自然に立ち向かう姿勢に少し安堵した。野菜の高騰が続く中、猫の額ほどの菜園で取れたニラ・ネギ・トイモガラに救われた。スーパーの特売日には目を凝らし、まとめ買い、即冷凍。生野菜は半分だけ買い、しのいだ。そんなことなど、どこ吹く風の夫だが、トイモガラとジャガイモの皮むきだけは黙って手伝ってくれた。
  鹿屋市 中鶴裕子 2016/12/3 毎日新聞鹿児島版掲載

ユッカに花が

2016-12-10 14:58:39 | はがき随筆


 9月のある日、思いもよらない光景に目を奪われた。門柱脇のユッカに花が咲いている。思わず「ユッカに花が咲いてる!」と叫んでいた。乳白色のかれんで優美な花が幾つも連なり、空に向かって咲いている。
 このユッカは娘が生まれた年に鉢植えで購入し、家を新築した折に地植えしたもので、3㍍を超える高さにまで成長した。それが32年目にして花をつけたのだ。調べてみるとリュウゼツラン科の植物とのこと。お隣さんから「お宅はいいことがあるよ」と声をかけられた。いしおしくて、幹をなで「咲いてくれてありがとう」と話しかけた。
  鹿児島市天野芳子 2016/12/5 毎日新聞鹿児島版掲載

台湾旅行

2016-12-10 14:44:43 | はがき随筆
 10月末、次男の嫁と孫娘が、台湾大学に孫息子が留学しているので一緒に台北へ行こうと千葉から来ました。こんな機会はめったにないと、3人で鹿児島空港から二泊三日の旅に出ました。日本統治時代の昭和3年に創立、戦後台湾国立大学となった台湾一の大学です。校地が広く、大概の建物から歴史が感じとれました。もちろん内部はリフォームされて使用されているのでしょうが。
 街は、人、車が多かったですが、地下鉄が整備され、駅も広くあちこち行くのに便利。されにホームドアで盲人、老人にやさしい地下鉄でした。
  鹿児島市 津田康子 2016/12/4 毎日新聞鹿児島版掲載