はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

早春譜

2020-05-02 21:48:56 | はがき随筆
 今年も令和初めての正月に、弟夫婦と凧揚げをした。暖冬の穏やかな日差しの青空へ巻き糸全部ほどく。体の大きい弟が子供のようにはしゃぐ姿に、今昔がよみがえる。
 車を停めて様子を見ていたご婦人が降りて来て「懐かしく見ていました。即興で一句詠みました」と紙切れに〝凧揚げのおじさん2人 満の笑み〟と俳句を頂いた。
 伺えば、南日本新聞に投稿される俳人とのことで「大事に保存します」とお礼を言った。田んぼの畔には、大根の花、菜の花のつぼみがふくらんでいる早春の候である。
 鹿児島県出水市 宮路量温(73) 2020/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載

まさか

2020-05-02 21:35:52 | はがき随筆
 いつもの畑を走り回っていたら、肥つぼに落ちた。母ちゃんに「まさかここに」と問うて「今捨てたが~(笑)」。「ハガイ(くやしい)」と愚痴をこぼすと「人生にはまさかが大事、油断するなよ」と逆に諭された。その時には理解が難しかったが、ふるさとを旅立ち振り返ってみるとまさかだらけの人生。母の言葉が心に染みた。ところが第2の人生、デパートや新幹線車内に絵の展示、また経験したことのない新聞連載。焼酎ラベルも描いた。仏壇の前に座り、母の遺影を見上げこんなまさかもあったよと声を掛けると、にこりと笑っていた。
 鹿児島県さつま町 小向井一成(72) 2020/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載

門出の春

2020-05-02 21:26:58 | はがき随筆
 上手に歌い踊ってみせれば先はアイドル? ポーズを決めればモデルかな。本を開きすんなりと物語れば未来は作家? いやいや将来はお医者さんだよネ、と相方の爺、婆に山ほどの笑福と夢を見せながら、孫娘は今年小学1年生になった。
 今、世界中は新型コロナウイルスに翻ろうされ、全ての行事が無になる気配。桜の花は満開になり、季節は普通に春なのに……。なのに今この春を迎えた若人や子供たちは前の見えない怖さがせつなく、可哀そうだ。一日でも早い終息と、平穏な日々が戻ってくることを願っている。
 宮崎県都城市 川野満子(69) 2020/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載

忘れられない話

2020-05-02 21:19:56 | はがき随筆
 子育てに追われていた若い頃、近所にチャーミングなおばあちゃんの家族が引っ越して来ました。おばあちゃんは同じ年の母と仲良しになり、毎日のように来ていました。昔、日本舞踊を教えていたとか。私が暗い顔をしていたのでしょう。楽しくなりますよと教えてくださいました。楽しい時間が過ぎて行き、息子さんの転勤でお別れの日が来ました。先生は体が弱ってきたので踊りはやめて、これからは塩の役目をしたいと笑顔で言われました。いい所を見つけておいしい味を広げ生かす心の塩加減をねと。人生の忘れなれないキーワードになりました。
 宮崎県八代市 相場和子(93) 2020/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載

ウオークラリー

2020-05-02 21:09:35 | はがき随筆
   霧島市横川町、丸岡公園を通り過ぎてさつま町堺を右に曲がると、山ケ野金山を支えた「高木」地区がある。幼少の頃祖父母に育てられた住居跡に梅を数本と、河津桜を植え足した。
 正月を過ぎると、この地周辺で歩道の整備、案内板の設置、草刈りが始まる。毎年3月第1日曜日に開催される「山ケ野金山ウオーク」の準備である。しかしながら、今回、新型コロナウイルスの関係でこの区域での行事は中止になったと聞かされた。今まで、各地のウオークラリーに参加させてもらっているが、いろんな方のご苦労に感謝している。
 鹿児島市 川畑正和(69) 2020/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載

シとレでワッハッハ

2020-05-02 20:54:08 | はがき随筆
 鎌、くわ、ねこ車等の小道具を使って日々、五ヶ瀬川のコノハナロードの美化作業をしているが、たまに道具が壊れる。一瞬迷って「壊れました」と整備係のリーダーに修理を頼むと、彼は淡々とすぐ直してくれる。そこで会長がユーモアたっぷりに「また壊したっけ」と言う。「いいえ、よく作業をしたので壊レたんです」と返すと「シとレじゃ大間違いじゃね」と大笑いになる。
 ロードには美しい花々と笑いの種がいっぱいある。
 今、こんな平穏な日常が新型コロナで失われようとしているようでとても寂しい。

藤の花

2020-05-02 20:43:33 | はがき随筆
 今年も庭の隅の藤棚が、夥しいほどの蕾をつけた。
 暦が4月に改まって寒の戻りも無くなり、近くの公園から風に吹かれた桜の花びらが、花吹雪となって門前の道路に舞い散るのを合図にしたかのように藤の蕾が膨らみ、30㌢ほどに伸びてブドウの房状に垂れ下がり、付け根(上部)のほうから順に白紫色の花が開き始めた。
 この見事な花々を多くの人に見てもらいたいのだが、あいにく自宅は通りから最も奥に位置している。我が家に来訪する人以外の通行人の眼にはとまらない。多くの人に鑑賞してほしいのだがなあ。
 熊本市東区 竹本伸二(91) 2020/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載 

ラ・リ・ル・レ・ロ

2020-05-02 20:12:19 | はがき随筆
 新型コロナウイルスの影響で、予定していた旅行はキャンセル。外食もままならず、週1回のミニ・バレーも中止に。
 そこで、家の中での時間をラリルレロで過ごしている。
 まずは、ジオ体操で毎朝体を動かす。本や新聞をじっくりと読むーディング。休校になり1人で守番をしている近所の児童の見守り。家庭菜園で採れた野菜料理に合うクロス、食器、箸置きを選び、卓上には花を飾るストランごっこ。頭の化防止に数独やクロスワードパズルを楽しむ。ちょっと強引だが当面はこのラ・リ・ル・レ・ロで乗り切ろう。
 宮崎市 四位久美子(70) 2020/5/1 毎日新聞鹿児島版掲載