絵話塾だより

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2022年7月23日(土)文章たっぷりコース・15回目の授業内容/高科正信先生

2022-07-27 22:29:06 | 文章たっぷりコース

高科正信先生による文章たっぷりコース第3期の授業もこの日を含めあと2回。たくさんのことを学んできました。

この日は「大暑」。土用の丑の日ということで、まずはうなぎのお話から。

続いての “よもやま話” は、高科先生の次の絵本のお話でした。

ずいぶん前に書き上げていた『プレゼントはひとつ』というお話が、絵をコマツシンヤさんに担当していただくことになり

福音館書店「こどものとも」2023年12月号(発売は11月)として出版されることが決定しました。

もうすぐ書店に配布される、福音館の2023年度の年間出版リーフレットのラインアップに載ることでしょう。

高科先生自身も、毎年このリーフレットを眺めて、面白そうな絵本が出る時に購入されるそうです。

ちなみに、今月発売しているのは『ひみつのえんそく きんいろのさばく』(文:くらさらら 絵:木内逹朗)で

素晴らしく魅力的な絵の、その絵本を紹介してくださいました。『プレゼントはひとつ』も楽しみですね!

その後、いつものテキスト(『日本語の<書き>方』(森山卓郎 著・岩波ジュニア新書)の

最後のところをみんなで見ていきました。(p213〜224)

4. 手紙文と形式
・手紙のフォーマット
・ 頭語と結語
・ 前文 —— 時候の挨拶と安否の挨拶
・ 主文
・ 結びの挨拶 —— 「本来ならもっと……」
・ 記書きなど
・ 電子メール
・ 媒体・文字の選び方
◎ 社会人としての伝え方

世の中にはうんざりするほどたくさん “手紙の書き方の本” が存在します。

この本(岩波ジュニア新書)は高校生向けなので、基本的な手紙の書き方が書かれていますが

要するに、できるだけ失礼のないようにしようと思うと、形式的なこと守った方が間違いが少ないということです。

たとえば初めてのところに書く場合は、できるだけていねいに書く方が良いので

フォーマット通りに書く必要はありませんが、知らないより知っておくほうが良いということです。

相手との関係性によっても書き方は変わりますが、いちばん大切なのは “ 伝えたいことを書きたい気持ち ” です。

誰かに何かを伝えるとき、電話が良いのか、Eメールなのか、手紙や葉書が良いのか、その場合縦書きか横書きか、

フォーマットはどうするのか、その都度ふさわしい方法を選んで、伝えるようにしましょう。

その後は、鹿島和夫編さんの『一年一組せんせいあのね』(理論社)から、

鹿島学級の子どもたちの詩を見ていきました。

一年生といえば、ひらがなを書くことさえおぼつかない年ごろですが、

毎日、先生に宛てた「あのねちょう」というものを書くことによって、いつのまにか表現教育がなされ

やまとなおみ ちゃんの「でんでんむし」という3行の短い詩のように

谷川俊太郎が読んで仰天したという素晴らしい作品を書けるようになったのです。

休憩の後は、前回の課題・長田弘の『読書からはじまる』(筑摩書房)から「子どもの本という本」の箇所を読んで

感想文を書いたことについて、みんなで話し合いました。

「子どもの本」というのは、子どもから読めて大人も読める本のことですが、内容は正反対です。

大人の文学は「人生とは?」「愛とは?」などの問いを発するものに対して

子どもの文学はさまざまな問いに対する答えを示してくれているものです。

「この世の中は、どんなに辛いことがあったとしても、生きるに値するのですよ」

という、「生」を肯定するお話になっています。

高科先生が子どもの本を読み始めたのは、大人になってからのことなので

子どもの頃、本が周りにあれば違う人生になっていたかも…とおっしゃいます。

評論家の川本三郎は、「絵本というのは、読者を今ここではない場所に連れて行ってくれるもの」だと言っています。

子どもの頃に読んだことがある本も、大人になって読むと、その人が重ねてきた年輪の中で

環境や読む力が変わっていて、全く違うもののように受け取れることがあり、だから面白いのです。

残念なことに、子どもの本の名作中の名作『指輪物語』を映画で見たことがあっても、

本は読んだことがないという人が大勢います。

とりわけ、子どもの権利や子どもに関わる仕事をしている人たちの中で

子どもの本を読んでいる人というは、そんなに多くはいないでしょう。

長田弘は「子どもの本という本」の中で、子どもの本に不可欠なのは

1. 古くて歳とったもの 2. 小さいもの 3. 大切なもの だと言います。

とりわけ「大切なもの」=「人や生き物を愛しいと思う力」であり、

子どもの本には、作家が苦労して辿り着いた真理がたくさん散りばめられているからおもしろい。

高科先生は、大人になったからこそ子どもの本を読んでほしいと思う、とおっしゃっていました。

この後、同じく長田弘の『なつかしい時間』(岩波新書)から「絵本を読もう」という箇所を見ていきました。

長田氏は、絵本をもっとも必要としているのは、大人ではないかと言っています。

自分たちが無くしてしまった「大切なもの」を見つけたければ、一冊の絵本を開くところから

やってみるのがいちばんかもしれない、とも。

文章たっぷりコース第3期ももうすぐ終わるという時になって、いま一度子どもの本(絵本)の重要さを

再確認することができました。

年を取って視力が落ち、小さな文字が読みにくくなっても、絵本ならたやすく読めることでしょう。

いくつになっても、絵本を読んで胸躍らせる生活を続けていきたいものですね。

 

高科先生が教えてくださる、文章たっぷりコース第3期は次回8月6日(土)で終わりますので

このコースに興味がある方は、この日が見学できる最後のチャンスです。

第4期は11月12日(土)から始まり、来年7月15日まで全16回のコースです。

ぜひよろしくお願いします。

 


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