この日は、前回の課題が「もしも子どもに戻れるとしたら、あなたは戻りたいですか?戻りたくないですか?」だったことから、「もしも願いが叶うなら」とうテーマから始まりました。
高科先生が現在進めておられる次回の作絵本も、「誕生日に何か一つだけ買ってもらえるなら何が良い?」という内容のものだそうです。
子どもの願いというのは、「幸せになりたい」「幸せな毎日を過ごしたい」というものが多く、それで子どもの文学には「幸せとは何か?」「どうしたら願い事が叶うのか」というテーマの作品が多いのだそうです。
このテーマで書かれた本として画期的だったのが、1902年に出版されたイーディス・ネービットの『砂の妖精』(講談社 青い鳥文庫)と、1952年に出版されたE・B・ホワイトの『シャーロットのおくりもの』(あすなろ書房)です。
いずれも出版当初は酷評されましたが、それまでのお話に登場していたいわゆる「良い子」ではなく、生身のやんちゃな子どもたちが、日常でファンタジー(魔法)を演じるというおもしろさに、現在まで読み継がれている人気作となりました。
他に、マリー・ホール・エッツの『わたしとあそんで』『もりのなか』『またもりへ』(いずれも福音館書店)も、子どもが動物とおしゃべりをしたり、遊んだりするさまが描かれています。
子どもたちが置かれる「幸せの形」はさまざまで、絵本や文学・映画の中にもたいろいろ描かれており、マコーレー・カルキンが出ている映画『マイ・ガール』も、少女が幸せになる方法を探しながら成長していくお話です。
1870年代にトルストイは『アンナ・カレーニナ』の冒頭で、「幸福な家庭はすべてよく似たものであるが、不幸な家庭は皆それぞれに不幸である」と言いましたが、1930年代になるとエーリッヒ・ケストナーが『ふたりのロッテ』(岩波書店)の中で、「不幸な家庭は一様だが、幸せな家庭はさまざまだ」と言っています。
この他に、『きょうはカバがほしいな』(著 E・ボルヒャース/絵 W・シュローテ/偕成社)や『まつげの海のひこうせん』(山下明生/偕成社)の絵本も、男の子の気持ちがよく描かれていると、読み聞かせてくださいました。
どの本も、「どうしたら幸せが見えてくるのか」が描かれている作品です。
休憩を挟んで、教科書『文章のみがき方』(辰濃和男 著/岩波新書)からは、4.乱読をたのしむ と 5.歩く の箇所を見ていきました。
絵本・料理本・寄稿文・エッセイなど、日本語で書かれたいろんなジャンルの本を乱読すると、自分の世界を広げることができるし、未知の世界に出会うことで脳の働きに刺激を与えることができるのだそうです。
例として、寺田寅彦のエッセイ集『科学と科学者のはなし』(池内了 編/岩波少年文庫)から、1918年に書かれた「瀬戸内海の塩と潮流」の箇所を見ていきました。
科学的な内容ですが、鳴門の渦潮など我々も知っている現象について掘り下げて書かれていて、読み物としても大変おもしろいものでした。
乱読といっても自分の専門分野ではない本に手を出すのは難しいので、例えば人に勧められたものや、新聞の書評などを読んで試してみるのが良いでしょう。
それで、先生は授業の中でさまざまな書物や漫画、映画などを紹介しているのだとおっしゃっていました。
「最後まで読み切らない “ 積ん読 ” でも良いのか?」という質問には、読書の仕方は人それぞれなので、蔵書に囲まれて亡くなった草森紳一のような人も居る(随筆『本が崩れる』中公文庫)から大丈夫だと教えていただきました。
また、歩くと何かに出会ったり、思いついたり、考えがまとまることがあります。
日頃から散歩を習慣にすると、文章を書くのにきっと役立つでしょう。
ということで、今回の課題は「散歩をして、その時に実際に見つけたもの、聞いたこと、漂った匂いなどに気を付けて書く」です。
型式や長さは自由ですが、筆者が体験したことを読み手に分かってもらえるようなものになれば良いですね。
提出は、年が明けて1月14日の授業時です。寒いですが、バーチャルでなく実際に外を歩いて書いてくださいね。
よろしくお願いいたします。