絵話塾だより

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2025年2月1日(土)文章たっぷりコース第6期・第5回目の授業内容/高科正信先生

2025-02-05 20:57:30 | 文章たっぷりコース

この週の高科先生は、水曜日のわくわくコースも担当されていたのでお話の内容が重複している部分もありますが、タイムリーな話題につきご容赦ください。

まずは今年は2月2日が節分ということで、絵話塾卒業生の みやもとかずあき さん*が、2023年講談社の絵本新人賞を受賞され、『あおくん ふくちゃん』という節分をテーマにした絵本で絵本作家デビューされたというお話から。
* 講談社のサイトには、みやもとさんが絵本作家を目指してから今回の受賞、出版に至るまでの経緯をご自身の文章と4コマ漫画で詳細に綴った連載記事がありますので、ぜひご覧ください。

ちなみに、絵本には節分やクリスマスなどをテーマにした「行事絵本」というジャンルがあり、毎年そのシーズンになると書店の目立つところにまとめて並べられるので、よく売れるそうです。

そして、テキスト『「書く力」私たちはこうして文章を磨いた』(池上彰・竹内政明 著/朝日新書) 第二章 本当に伝わる「表現」とは の箇所を皆で読んでいきました。
・わかっていることを、わかっている言葉で書く
・ベタに書くことを恐れない
・感情は抑える
・ツッコミを先回りする のところまで。

自分がわかっていることを、わかっている言葉で書かなければ、読者に伝わるはずがありません。
ですから、自分の中にわかっている言葉を増やすことが重要になってきます。
できるだけたくさんの言葉を身につけ〜たとえば雨の種類や色の名前など〜表現の枠を広げて、伝わる内容を増やすようにするのです。
テキストの中に「アイデンティティ(自己同一性)」という言葉が出てきて、著者のお二人は「腑に落ちないので使わない」と言っておられるのですが、この言葉でしか表せない概念があるのもまた確かです。元は哲学用語で、日本にはなかった言葉だそうです。

  

1969年に出版された『くまの子ウーフ』(神沢利子 著・井上陽介 絵/ポプラ社)は、ウーフがぼくは何でできているかを考え、「ぼくはぼくでできている」ことを知るお話。
70年代には 山中恒の『ぼくがぼくであること』(岩波少年文庫) などが、日米安保条約に反対の学生運動で疲弊した若者たちに支持された一方で、
アメリカでも、60年代にベトナム戦争で心身ともに傷ついた若者たちが、レオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』(藤田圭雄 訳/至光社) を読んで、何のために生まれてきたのか、生きる意味とは何かという問いの答えを探すムーブメントがあったそうです。

これらはみな「アイデンティティ」に関するお話で、子ども向けの文章で深い内容について語っているといえるでしょう。

次いで、今年1月13日(成人の日)の天声人語を見ていきました。
前々回の授業でも紹介された茨木のり子の詩集『おんなのことば 文庫』(童話屋) から『汲む』を引用して、新成人へのエールを綴っています。

コラムは短いので、茨木のり子・石垣りん・谷川俊太郎など詩人の言葉をよく引用しています。
魅力的な文章を書くうえで、詩を読んで自分の引き出しにしまっておくのもよいでしょう。

  

休憩をはさんで、前回も見ていった 中村明の『文章作法辞典』(講談社学術文庫) から、
「読まれなければ始まらない」の箇所を見ていきました。
その中では、大正時代に森鴎外の書いた『山椒大夫』と、昭和に寺村輝夫が書いた『一休さん』を比較したり、淵悦太郎の『悪文 伝わる文章の作法』(角川ソフィア文庫) の中で紹介された文章を例に挙げて、説明しています。

文章中に漢字が多いと紙面が黒っぽくなって難しそうに思えますが、逆にひらがなばかりでもかえって読みにくくなったりするので、対象となる読み手のことを考えて加減しましょう。

世にある悪文を紹介し、その文がどうしたら分かりやすくなるかを解説しているのが千早耿一郞の『悪文の構造-機能的な文章とは』(ちくま文庫) で、興味がある方はチェックしてください。 

ここで生徒さんから子ども向きの読み物の変遷についての質問があり、原題では多様性だったり残酷性だったり、さまざまなコンプライアンスが昔と変わってきています。
今の時代の作家たちは、新しい生き方を模索して移り変わっていくしかないといい、一方で受け手は作品が描かれた時代をきちんととらえる意識を持つ必要があります。

それらをふまえて、今回の課題は「昔話を書く(再話)」です。
よく知られている桃太郎とかシンデレラなど、世界中の昔話を自分の中でもう一度組み立て直して、新しい物語に仕上げるというもの。
登場人物やストーリーの流れ、結末などは変えずに自分なりの文章で構成してください。
何かを見ながら、細部までなぞる必要はありません。自分で覚えている範囲で結構です。
ただ昔話なので、語り手が話す「むかーしむかしあるところに」というような語り口調で書いてください。
聞き手は主に子どもと考え、やさしい言葉で、文体やリズムを考えましょう。
長さや、書き方(「」の使い方や改行など)も自由です。
このように、今回は「物語を作る」ということをしてみましょう。

昔話の様式として
①良いおじいさんと悪いおじいさんなど、対照的な登場人物が出てきて、彼らが起こした行動で結果が変わってしまう とか
②3匹のこぶたなど、1回目・2回目・3回目とどんどん話が進んでいく などがあります。

柳田國男の『日本の昔話』(新潮文庫)や、小澤俊夫の『こんにちは、昔ばなしです』(小澤昔ばなし研究所) などには、たくさんの昔話が載っています。

 

好きな昔話を見つけて、うまく自分なりのお話に仕立ててください。
締め切りは次の2月15日の授業の時です。よろしくお願いいたします。

 


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