【室温~夜の音楽~】
作 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
演出 河原雅彦
世田谷パブリックシアター
2020.7.4
最初はちょっとコメディっぽかったのに
じわじわとホラーになっていく・・・
不思議な感覚の舞台だった
真夏のある日
海辺の町の洋館に次々と人が集まってくる
家の主、海老沢(堀部圭亮)はホラー作家
なにやら怪しいスピリチュアルな商売もしている
双子の娘の片方、キオリ(平野綾)と住んでいる
そこに日頃から入り浸る警官下平(坪倉由幸)
腹痛を訴えて訪れたタクシー運転手木村(浜野健太)
海老沢のファンだという若い女性赤井(長井短)
服役を終えた殺人犯間宮(古川雄輝)
が集まってくる
最初はみんな何かの事情はかかえていそうなものの、善人に見える
けれど、だんだんとそれぞれの中にあるどす黒いものが浮かび上がってきて、あれ?なんかちょっとヤバい?
って思い始め、じわじわ背筋が寒くなってくる。
かと思うと、急に舞台の上の方にバンド
が現れて、浜野さんが歌い出す
浜野さんと一緒に歌ったり、
亡くなった近所のおじいさんの幽霊だったりで登場するファンキーなおじいさんの伊藤ヨタロウさんも目が離せない
なんとも不思議な世界観
やがて、海老沢の双子の娘でキオリの妹が残忍な殺され方をしたことや、その犯人の一人が恋人だったこと、地元で起こってる事件のこと、殺された娘のお腹の子の父親がまさかのあの人!などなど、それまでに張り巡らされてきた伏線がどんどん回収されていく。
とにかくみんながヤバい人で、最後には殺人をして出所してきた間宮が一番マトモに見えてくる始末。
ホラー・コメディくらいの軽い気持ちでいたら、とんでもないことになっていった。
一人一人がもつ人間の心の光と闇が交互に現れて、葛藤して、見ている方も苦しくそして切なくなる。
私の中にも誰の中にも様々な感情が渦巻いていて、平素は無意識のうちに理性で押さえている部分もあるのだろう。
ふと、非日常の中に入り込んでしまうと抑えきれないものが出てきてしまうのかもしれない。
つい先日も、そんな抑えきれない感情に突き動かされてしまった人によって、元総理が命を落とした。
人はいつどんなふうになってしまうのかわからない、ということを改めて深く考えさせられた舞台だった。
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