【無駄な抵抗】
作・演出 前川知大(劇団イキウメ)
2023/11/17 世田谷パブリックシアター
荒天の中、友人と大好きな「イキウメ」の舞台を観に三軒茶屋の世田谷パブリックシアターに出かけて行く。
悪意無く、他人から自分に向けて発せられた言葉が
呪いのように突き刺さり、その後の人生を左右する。
人は定められた運命に抗えるのか・・・
ある日、電車の通過駅となってしまい、
寂れていく街の駅前広場が舞台。
何もしない大道芸人(浜田信也)が広場のあちこちに移動しながらまるですべてを見通してるかのように人々を見ている中、
元占い師でカウンセラーの桜(松雪泰子)とクライアントの芽衣(池谷のぶえ)が話し始める。
2人はかつての同級生で、芽衣は桜が小学生の時に自分に向けた言葉を呪いのように受け止め、そうならないように禁欲的に生きてきたらしい。
広場に現れる人々の会話から、じわじわと芽衣の置かれている状況が見え始め、
そこに出たり入ったりする人たちとの関係性がわかってくる。
芽衣とホストの関係を調査する探偵(安井順平)と依頼主の孫(穂志もえか)
施設育ちのホスト(渡邊圭祐)と施設仲間のシングルマザー(清水葉月)
少し疎遠になっている芽衣の兄(盛隆二)
かつて施設ので今は駅ビルの警備員(森下創)
駅に電車が停まらなくなってしまったため、閑古鳥が鳴いているカフェのマスター(大久保人衛)
最初はただのヤバい人のように見えた(私には)芽衣が抱える闇が見えてくると、
その闇が周りの人たちも包み込み、どんどん深くなってくる怖さ・・・
パンフレットによると、
ギリシャ悲劇「オイディプス王」を題材にした作品だという。
恥ずかしながら、オイディプス王をよく知らないのだけれど、
そうとは知らずに運命に導かれていく恐ろしさ、残酷さがじわじわとこみあげてくる
運命と自由意志、捨て子、父親殺し、近親相姦・・・
広場の人たちの会話から一つ一つが「あれ?もしかしたら」と思い始めると、
それぞれの立ち位置がどんどんつながってきて、「あの人とあの人がもしや?」と
頭の中がぐるぐるして舞台から目が離せない。
ちょっと気を抜くとおいて
席は前から2列目で、役者さんたちの表情まで、よく見える。
唇を震わせたり、苦痛にゆがんだり、あまりのリアルさに、観ているこちらまで胸が締め付けられるようだ。
少しだけ明るい未来が見えたのがせめてもの救い。
「いろいろあってここにいる」という運命を受け入れるセリフが、胸に刺さる。
「イキウメ」の舞台は、パラレルワールドみたいなものが出てくることが多い気がするが、
今回はちょっと違う。
だけど、現在と過去を行き来する感じはそれに近いのかも。
ちょっと今の社会(戦争も含めて)への風刺のようなセリフもちくちくとささる。
登場人物たちが、色々あっても運命に抗いながら前を向いて生きていく姿が心に焼き付いた気がする。
観終わった後も、じわじわといろんなことを考えさせられる舞台だった。
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