ゆるゆるらいふ

とりあえず、今日も一日機嫌よく・・・

ねじめ正一氏講演会

2015年10月05日 | イベント
お仕事でお世話になっている家具メーカーの方にお誘いいただき、介護に関する講演会に参加してみた。

直木賞作家でもあるねじめ正一氏がご自身のお母さまの介護体験をお話しくださるという。

このことはご著書である「認知の母にキッスされ」にも書かれているとのこと。

お母様は単にいろいろなことを忘れてしまうだけではなく、妄想を伴う認知症らしい。

そのため、実際にはいない人のお話をしたり、架空のお使いごとを頼まれたり、
そうかと思えば、ねじめさん自身の覚えのない女性関係を追及されたり、と日々神経をすり減らしながら
お母様と接してらしたご様子。

ただ、小説家と言う職業柄、いろいろな角度からお母さまを見つめ、優しくユーモラスに受けとめていらしたようだ。

そのお母様は、今は入院し、ほとんどお話しすることなく、眠っていることが多くなったとおっしゃる。
それでも、そのベットの傍らで、わざと音を立てて新聞を読んだり、話しかけたり、
と自分の気配をお母さまが感じるようにと心がけてらっしゃるとか。

「寄り添うことが大切」とおっしゃる。

この講演を聞き終えての感想は、と言えば「これは介護って言うのか?」かな。

あくまでも、講演だけを聴いてのことであって、もしかしたらご著書にはもっと大変なことがたくさん書いてあったのかもしれない。
ただ、講演を聴く限りでは、どちらかというと「お留守番」だ。

基本的な立ち位置が一般の人と違いすぎる、と言うこともある。

ご自身のお店は、昼間ねじめさんがお母さまのそばにいる間、奥様が切り盛りしてくれる。
一緒に住んでいらっしゃるのは弟さんご夫婦。
弟さんたちは昼間働いていて、夜に帰ってきてからお母さまを看ることとなり、かなりの寝不足だったとか。
だったら、昼間眠ることもできるねじめさんが夜についててあげたらいいのに・・・、などと思ってしまう。

ご自身の資金援助で、家の近くの施設に入ることが出来、毎日顔をだし、何時間でも話し相手になれる、というのも、
一般の人にはなかなかできないことだ。

寄り添いたくても、なかなか家の近くの施設に入れる財力も時間も無かったりするのが現実ではないだろうか。

ご自身はたとえ話してなくても何時間もいられるが、奥様は1時間が限度なので、1時間でできることを探す、というのは男女の違い、
ともおっしゃっていたがこれも何だか違う気がする。

会話が無くても、ただベッドの傍らでいられるのは実のお母様だからではないか、と私は思う。
妻は義理の母との歴史が浅い。
夫と同じだけの歴史や想い出をを共有してはいないのだ。
これは、姑が好きとか嫌いとかのことを言っているのではない。

何度も言うが、あくまでも、講演内容の感想だ。
これだけ聞くと、一番おいしいところだけ取ってるようにも聞こえ、
逆にこれを本にされた同居している弟さんたちは、どんな思いなのだろう、と考えてしまう。

ただ、「男はいくつになっても母親にほめてもらいたいものだ」
「私のために、がんばってくれてありがとう、よくやったね、と言ってほしい」
とおっしゃっていたのには胸が熱くなった。

きっとそうなのだろう。
夫を見ていても、本当にそう思う。
母親に喜んでもらおうと、けなげな努力をし続けている。

そして、これは息子も、娘も、だと思う。

かつて何よりも大きな存在だった自分の親が老いていき、違う人のようになっていくのを受け入れるのはとてもつらい。
物理的に大変な介護に、精神的な面も加わるから、身内の介護はより過酷なものになってしまうのかもしれない。

私自身のことを思ってみても、夫と私、双方の親の介護はもう目の前まで来ている。
そうしているうちに自分も介護される側になってしまうのだろう。

ねじめさんの体験は、残念ながらあまり参考にはならなかったけれど、
前向きに接することや寄り添う気持ちの大切さは伝わってきた。

じゃあ、自分の立場ならいったいどんなことができるのだろう、と見つめ直すいいきっかけになったと思う。

介護の形は子育て同様、人それぞれ、ケースバイケースだ。
子どもはいろんなことがどんどんできるようになり、いずれは一人で歩いて行くけれど、
介護はいろんなことが出来なくなり、一人で生きて行けなくなってくる。

今の私は、子育てがやや終わり、介護まではまだ少しの猶予がある、という時間の中にいる。
どういう介護が必要になってくるかはその時になってみないとわからないので、
とりあえずは今の自分の時間を大切に生きて行こうと思う。

それにしても、もう少し、安心して年をとれる社会ならどんなにかいいだろう。
結局は個人の財力がものをいうんだなあ、と思い知った講演会だった。










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