「片づけたい女たち」
作 永井愛
演出 保坂萌
2024/10/19 シアタートップス
幕が上がるとそこは汚部屋。
散乱するごみ、脱ぎ散らかした洋服、
ぐちゃぐちゃの紙類や本など、
テレビの片付け番組でもよく見る光景が広がる。
そこに恐る恐る入ってくる女性二人。
おチョビ(佐藤真弓)とバツミ(有森也実)だ。
この部屋の住人ツンコ(松永玲子)と連絡が取れないのを心配して様子を見に来たらしい。
3人は高校のバスケ部からの30年来の友人。
ゴミだらけの寝室から出てきたツンコを放っておけない二人は、
嫌がるツンコを𠮟咤激励しながら部屋を片付けていく。
家族で居酒屋を切り盛りするおチョビが、片付けの指示を出す。
かなり年上の夫を持つ主婦のバツミはそれに従いながらもあちこち脱線。
シングルのキャリアウーマンで、彼と別れたばかりのツンコは二人が捨てようとするものをなかなか捨てられない。
片付けの仕方は私が受講したライフオーガナイザーの講座で習った通り。
モノじは全部出してあるので、
まずは分類。
そして位置を決めて片付ける。
迷ってるものは「迷ってる」の箱へ。
その動きがとても自然で、
脱線の仕方もあるあるで、
自分のことのようでちょっと恥ずかしい。
腰が痛かったり、膝が痛かったり、肩が上がらなかったり・・・
ありがちなやりとりも、自分のことのよう。
片付けながら思い出話をしたり
今の生活の愚痴を言ったり、
将来の不安を語ったり、
過去の後悔を思い出したり・・・
昔の友達と会うとこういう風になるよな~、っていうのもリアル。
それぞれが、それぞれの悩みを抱えていて
吐き出したり、
共感したり、
説教したり、
励ましたり、
と部屋が片付くのと同列で
それぞれの心の中も片付いていく。
どんどん片付いていく部屋を見ているのが楽しい。
3人の悩みのどれかが誰かに刺さっていると思う。
みんなが「あるある」と思いながら観ていたのではないだろうか。
私も、何度も「あるよな~」と思い、
そうそう、私もそれが捨てられない、と共感し、
ああでも、そうやって捨てればいいのか、と感心し、
あっという間に終演となった気がする。
いくつになっても悩みは尽きない。
その年齢なりの悩みが次々とわいてくるのよね~
でも学生時代の友達に会うと、
一瞬でその時の気持ちにタイムスリップする。
これを繰り返せばアンチエイジングになるのではないかと錯覚するほどだ。
完ぺきではないまでも、
なんとなく片付いて、人間らしい部屋になって、
それぞれが未来を見つめてそれぞれの場所に帰っていくラストが清々しい。
真夜中の話だけれど、朝日が差し込むようだ。
おもしろかった~!
永井愛さんの作品のセリフのリアリティが大好き。
すっと物語の中に入ってイメージを共有できる感じがなんとも好き。
久しぶりのシアタートップスのちょうどいい広さも好き。
土曜の午後、お付き合いくださった友人と、
観劇後に無印のカフェでお茶を飲み、
激混みの伊勢丹の地下でお弁当を買い、
家に帰ったら私も片付けよう、と心に誓った。
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