ゆるゆるらいふ

とりあえず、今日も一日機嫌よく・・・

【観劇メモ】十二人の怒れる男

2020年09月23日 | 演劇
【十二人の怒れる男】

作 レジナルド・ローズ
演出 リンゼイ・ホスナー
シアターコクーン

先日の「ゲルニカ」(PARCO劇場)に続いて、今回は同じく渋谷のシアターコクーン。

自分の中の「観劇」のコロナ自粛が、やや薄れつつある今日このごろ。

「十二人~」はあまりにも有名な演目。

モノクロの映画でも観たし(テレビだけど)何年か前に中井貴一さんが主演のバージョンも観た。

今回の演出家はコロナ禍で来日できず、リモートで演出したとか・・・。

真ん中に舞台があって、両サイドに客席。

会議室にあるような長机に座って話し合う12人を見下ろす感じ。

12人は陪審員。

黒人の16才の少年が父親を殺した、と言う事件について審議して、有罪か無罪かを決定する。

評決は全員一致でなければならず、もし有罪ならば少年は死刑。
これまでの裁判の内容では、少年の有罪はあきらか。

陪審員長を務める1番(ベンガルさん)がまず最初に決を取る。

これで全員「有罪」に票を入れれば、審議は終わり。

7番(永山絢斗さん)はチケットを持っている野球の試合を観に行くことができるし・・・

もちろん全員が有罪、と思いきや8番(堤真一さん)がまさかの無罪に1票。

彼は、無罪とも思ってないけど、少年の人生を決めるのにもう少しちゃんと話し合いたい、と提案し、みんないやいやながら話し合いを始める。

少年が住んでいる地域は治安が悪いらしく、罪を犯すのは当然、という偏見や人種差別的発言が飛び出したり。

目撃証言があるのだから・・・と何の疑いも持たなかったり。

少年が主張しているアリバイを最初から嘘だと決めつけたり。

だけど、話し合いを重ねるうちに少しずつ「あれ?それっておかしくない?」ってところがぽろぽろ出てくる。

何度か決をとるうちに、少しずつ「無罪」に手を挙げる人が増えてくる。

「無罪」とはっきり言えないけれど「有罪」にするには矛盾が生じてくるのだ。

ドアの外で待っている警備員に図面を持ってきてもらったりして、徐々に審議は熱を帯びてくる。

陪審員たちの生活環境、家族関係など、さまざまな個人的な感情が少年の事件と重なり合い、憎悪したり同情したり・・・

やがて、大きな矛盾が見つかり、みんなの意見はついに無罪に向かっていく。

一つの部屋の中で、椅子に座ってひたすら話し合うだけ。

ちょっと休憩時間にトイレに行って、手を洗いながら雑談したり、調子のいい自慢話をしたり、
意見が通らずひたすら大声で威圧したり、高齢の陪審員をあからさまにバカにしたり、
ふざけて茶化したり、ひたすら真面目に冷静に分析したり、人の意見に流されたり・・・。

人間の性・縮図みたいなものがぎゅっと詰め込まれていて、目が離せない。

6番の梶原善さんは、少し前に配信されたの三谷幸喜さんの「12人の優しい日本人」のリモートリーディングでも陪審員をやっていたので、思い出したりもする。
なんだか二度おいしい気がしてちょっとうれしい。

今回は、舞台が真ん中にあるので、当然俳優さんがこちらに背を向けて話すときがあるのだが、人によっては何を言っているのか全然聞こえないのがちょっと残念だった。

特にベンガルさんの声が聞き取りにくく感じたし、2番の山崎一さんが聞き取りにくいのがちょっと意外だった。

そんな中、4番の石丸幹二さんはどこをむいてしゃべっていてもはっきり聞こえる。

さすがです。

高齢の陪審員9番の青山達三さんの声も聞き取りやすかった。

7番永山絢斗さんのチャラい感じ、12番溝端淳平さんの広告代理店にいそうな鼻に付く感じも、いかにもいそうな人たちでニヤニヤしちゃう。

結果がわかっているのにはらはらどきどき。

最後は皆さんが部屋を出ていく姿を見ながら「あ~よかった」って思う。

このところ、コロナ禍で舞台の生配信がちょくちょくあって、視聴チケットを買ってみたりしてるけど、なんとなく不完全燃焼感が漂っていた。

生で観ていると、例えば誰かばしゃべっているとき、隅っこで水を飲んでいる誰かの仕草を見たり、いや~な顔をしている誰かを見たり、と私は自由に好きな所を観ることができる。

けれども配信だと、カメラマンさんが見せたいところしか見られない。
たぶん、そこの所の違和感なんだろうな~

劇場のコロナ対策は・・・

先週のパルコ劇場と同じように、マスク着用、靴底、手指の消毒、座席は隣が空いていて、前後も互い違い。

加えて、舞台に近い席はフェイスシールド着用。

今、これだけゆったりとストレスフリーで観られると、コロナが落ち着いた時にびっしり満席状態がいやになってしまいそう。

社会の動きがピタッと止まってしまった春に比べると、いろいろなことがゆっくりと動き出した今、油断するとまた春のようになってしまうのかなあ、と思いつつ、みんな手探りで前に進んでいるのが実感できる。

誰かを誘うのもちょっと気が引けるので、一人でそっと観劇して心を満たして劇場を後にした。

ここでまっすぐ帰れば、満足感だけで済んだものを・・・

シアターコクーンの入っている建物には東急百貨店がくっついていて、地下の食料品売り場で買い物をしようと思ったのが、間違いだった。

7月に骨折してまだ治らない義母の好物のカニのお弁当を買おうと、特設の売り場に並んだばかりに、思わぬことに巻き込まれることになる。

先に一人の女性が支払いをしていて、私ともう一人テレビドラマに出てくるようなお金持ち風のマダムがほぼ同時にその横に立った。

先の女性が売り場を離れたら、すかさずマダムが注文をする。
それを聞いた店員さんが私を見て一言「大丈夫ですか?」と聞いた。
何を意味したのかはよく分からないけど、マダムが注文したのが私も欲しかったのではないかと思ってくれたのか、
私のほうが先に並んでいたのかと思ってくれたのか、とにかくその一言がマダムの逆鱗に触れた。

「それどういうこと?私がわりこんだってこと?」と大声で怒り出したのだ。
「私のほうがずっと先に待ってたでしょ!」

いやいや、そんなに先でもないし・・・

店員さんは平謝り。
「そんなつもりでは・・・」
何度も何度も謝ってるのにマダムは決して許さない。

同じことを何度も繰り返し、彼女の名前を聞き東急の上の人に抗議するなどと恫喝する。
こんなに誤ってるんだからもういいじゃない、と思っていたら私を指さし「こっちが何も言ってないのに何でそういうことを言うの⁉」

ぼーっと立ってたら「こっち」呼ばわり・・・。

奥から上の人らしき男性が出てきてさらに平謝り。
それでも怒りはおさまらない。
ゴールドカードをたたきつけ、こんなに嫌な思いをしたのだからサービスしなさい、と有料レジ袋代4円を踏み倒し、奥の売り場に消えていった。
ぽかんとしてたら、上の人と店員さんに「不快な思いをさせてしまって申し訳ありませんでした」と謝られた。
マダムに買われなかったお弁当を一つ買って、袋代4円を払って、売り場を後にする。
あんなに怒って、マダムはすっきりしたのだろうか。
あのお弁当は美味しくいただけたのだろうか・・・
お金持ちそうだけど幸せなのだろうか・・・

などと考えながら帰り道を急ぐ。

ぼ~っとしてたら変なことに巻き込まれて、せっかくの舞台の余韻がどこかに行ってしまった・・・。

次回は寄り道しないぞ!と心に誓ったのだった。

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