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ここ数年、私のアタマは野田秀樹さんのお芝居の難解さについていけず、なんとなく足が遠のいていた。
けれど、1996年の初演以来、海外でも何度も上演されているこの「赤鬼」は一度観ておきたかったし、
なんといっても、青山円形劇場が今年度をもって閉館となる、ということもあり、
思い切って平日の昼間、ひとりで行ってみた。
円形劇場は数年前、「叔母との旅」という舞台を観て以来行っていない。
「こどもの城」という渋谷区の公共施設の中にあるこの劇場。
青山のど真ん中という抜群の立地。
建物の前には
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岡本太郎さんのこんなモニュメントが・・・。
名前の通り舞台は円形で、同心円状に客席が取り囲む。
客席はせいぜい5~6列なので、とてもよく見える。
俳優さんの舞台への出入りは客席の通路を通るので、臨場感があって、面白さが倍増する。
今回の舞台はこの4人がメイン
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その他に、島の人々を演じる、役名の無い3人の男性がいるのだけれど、
この人たちは開演前から舞台の上や通路を衣裳を纏って、無言で歩き続けている。
さて、円形の舞台の上は、地球儀のように青い色がちりばめられ、海のようにも陸のようにも見える。
漂流ののち助けられた「あの女」が助けられた直後、「ふかひれ」というキーワードをきっかけに
せっかく助けられた命を自ら断つシーンから始まり、そこに至るまでの回想シーンへと移っていく。
ことのきっかけは、「赤鬼」と呼ばれる男が島に流れ着いたこと。
今回は小野寺修二さんと言う方が演じているが、今までは外国の方が演じていたようだ。
言葉が通じない異国の人と言う設定だけれど、結局は日本語を話しているので、ちょっとその設定がわかりにくいかも。
島の人々は流れ着いた外国人を「赤鬼」と呼んで、助けようともしないが、
この島で村八分になっている黒木華さん演じる「あの女」だけが、心を通わせていく。
「あの女」の、本人がいうところのアタマの足りない兄「とんび」に柄本時生さん。
「あの女」に思いを寄せているけれど、素直に表現できず、うそばかりついている「水銀(みずかね)」に玉置玲央さん。
彼女の命を助けるためについた渾身の嘘が、逆に彼女を自死へと向かわせてしまう。
舞踏を思わせるような大胆かつ繊細な動きで、舞台の上を動き回るのだけれど、
急に数人で倒れ込んだりしても、身体が音を吸収してるかのように、ほとんどバタンっていう音もしないので、
全身の筋肉をかなりの鍛え方で使ってるって気がする。
黒木さん、柄本さん、玉置さんの幼馴染感が本当に自然で、そこそこ残酷なことを口にしていても、
心のずっとずっと底の方に、信頼感が見える気がして、なんとなく安心して見ていられる。
異人である「赤鬼」や「あの女」をターゲットにして、不幸な出来事を彼らのせいにしたりすることで、
自分たちが団結し、安心を得ようとする構図は、現代のいじめや差別そのもの。
今から20年近く前に作られた話とは思えない新鮮さを感じる。
ハッピーエンドとならない残酷さを残したまま物語は終わってしまうのだけれど、
ここ数年よくわからなかった野田作品とは違い、理解力の足りない私にもすっと入ってきた。
観に行ってよかった
このすごいお芝居を見ながら、私はふと思い出したことがある。
今は22歳になった長男がまだほんの子供だった頃、「ももたろう」の絵本を読み聞かせたときのこと。
この絵本はホントに小さな子供向けで、まるで「ミッフィー」のようなシンプルな絵に
1ページに、たった一行か二行しか文章が書いてない。
桃太郎が生まれる~成長する~犬・猿・きじと鬼が島へ行く~鬼を退治する~宝を持って帰ってくる、
めでたしめでたし、ってくらいのハショリようだ。
で、読み終った時に長男が言う。
「桃太郎はひどい
鬼がかわいそう
」
そう、この物語の中では鬼は何も悪いことをしていない。
桃太郎がいきなり鬼が島へ乗り込んだ侵略者のようなのだ。
おとなは「鬼=悪者」という先入観でこの絵本を作り、そのままの意識で子供に読んで聞かせたけれど、
「鬼=悪者」ってことを知らない長男には、桃太郎の方が悪者そのものだった。
そのとき「鬼って差別の象徴なのかも」、なんて、漠然と思ったことが、今回の「赤鬼」を見てよみがえったりした。
もちろん長男はそんなこと覚えていない。
それにしても、この劇場が無くなってしまうのは本当に惜しい。
閉館撤回を求める署名運動などもしていたようだけれど、何と言っても公共施設なので、なかなか難しいことだろう。
この劇場がその歴史に幕を下ろす今、普遍のテーマを題材にしたこのお芝居がここで上演されたことの意義は
とても大きい、ような気がする。
けれど、1996年の初演以来、海外でも何度も上演されているこの「赤鬼」は一度観ておきたかったし、
なんといっても、青山円形劇場が今年度をもって閉館となる、ということもあり、
思い切って平日の昼間、ひとりで行ってみた。
円形劇場は数年前、「叔母との旅」という舞台を観て以来行っていない。
「こどもの城」という渋谷区の公共施設の中にあるこの劇場。
青山のど真ん中という抜群の立地。
建物の前には
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岡本太郎さんのこんなモニュメントが・・・。
名前の通り舞台は円形で、同心円状に客席が取り囲む。
客席はせいぜい5~6列なので、とてもよく見える。
俳優さんの舞台への出入りは客席の通路を通るので、臨場感があって、面白さが倍増する。
今回の舞台はこの4人がメイン
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その他に、島の人々を演じる、役名の無い3人の男性がいるのだけれど、
この人たちは開演前から舞台の上や通路を衣裳を纏って、無言で歩き続けている。
さて、円形の舞台の上は、地球儀のように青い色がちりばめられ、海のようにも陸のようにも見える。
漂流ののち助けられた「あの女」が助けられた直後、「ふかひれ」というキーワードをきっかけに
せっかく助けられた命を自ら断つシーンから始まり、そこに至るまでの回想シーンへと移っていく。
ことのきっかけは、「赤鬼」と呼ばれる男が島に流れ着いたこと。
今回は小野寺修二さんと言う方が演じているが、今までは外国の方が演じていたようだ。
言葉が通じない異国の人と言う設定だけれど、結局は日本語を話しているので、ちょっとその設定がわかりにくいかも。
島の人々は流れ着いた外国人を「赤鬼」と呼んで、助けようともしないが、
この島で村八分になっている黒木華さん演じる「あの女」だけが、心を通わせていく。
「あの女」の、本人がいうところのアタマの足りない兄「とんび」に柄本時生さん。
「あの女」に思いを寄せているけれど、素直に表現できず、うそばかりついている「水銀(みずかね)」に玉置玲央さん。
彼女の命を助けるためについた渾身の嘘が、逆に彼女を自死へと向かわせてしまう。
舞踏を思わせるような大胆かつ繊細な動きで、舞台の上を動き回るのだけれど、
急に数人で倒れ込んだりしても、身体が音を吸収してるかのように、ほとんどバタンっていう音もしないので、
全身の筋肉をかなりの鍛え方で使ってるって気がする。
黒木さん、柄本さん、玉置さんの幼馴染感が本当に自然で、そこそこ残酷なことを口にしていても、
心のずっとずっと底の方に、信頼感が見える気がして、なんとなく安心して見ていられる。
異人である「赤鬼」や「あの女」をターゲットにして、不幸な出来事を彼らのせいにしたりすることで、
自分たちが団結し、安心を得ようとする構図は、現代のいじめや差別そのもの。
今から20年近く前に作られた話とは思えない新鮮さを感じる。
ハッピーエンドとならない残酷さを残したまま物語は終わってしまうのだけれど、
ここ数年よくわからなかった野田作品とは違い、理解力の足りない私にもすっと入ってきた。
観に行ってよかった
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このすごいお芝居を見ながら、私はふと思い出したことがある。
今は22歳になった長男がまだほんの子供だった頃、「ももたろう」の絵本を読み聞かせたときのこと。
この絵本はホントに小さな子供向けで、まるで「ミッフィー」のようなシンプルな絵に
1ページに、たった一行か二行しか文章が書いてない。
桃太郎が生まれる~成長する~犬・猿・きじと鬼が島へ行く~鬼を退治する~宝を持って帰ってくる、
めでたしめでたし、ってくらいのハショリようだ。
で、読み終った時に長男が言う。
「桃太郎はひどい
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そう、この物語の中では鬼は何も悪いことをしていない。
桃太郎がいきなり鬼が島へ乗り込んだ侵略者のようなのだ。
おとなは「鬼=悪者」という先入観でこの絵本を作り、そのままの意識で子供に読んで聞かせたけれど、
「鬼=悪者」ってことを知らない長男には、桃太郎の方が悪者そのものだった。
そのとき「鬼って差別の象徴なのかも」、なんて、漠然と思ったことが、今回の「赤鬼」を見てよみがえったりした。
もちろん長男はそんなこと覚えていない。
それにしても、この劇場が無くなってしまうのは本当に惜しい。
閉館撤回を求める署名運動などもしていたようだけれど、何と言っても公共施設なので、なかなか難しいことだろう。
この劇場がその歴史に幕を下ろす今、普遍のテーマを題材にしたこのお芝居がここで上演されたことの意義は
とても大きい、ような気がする。
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