人生ブンダバー

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烏賀陽弘道『「朝日」ともあろうものが。』(河出文庫 新刊)

2009-06-17 05:09:36 | 読書
結論を先に言ってしまうと、この本は今年上半期に読んだ本の中、おもしろさの点
で、ベスト3に入ることは間違いない。(評価;★★★★★)

「業界研究」では分からない「世界」があるものである。例えば「官庁の世界」、
「警察の世界」、「芸能界の世界」等々、実際にそこで働いてみないと分からない
ことがある。
本書は、「大新聞社の世界」--とくに朝日新聞(記者生活)の「世界」が綴られ
ている。

朝日新聞については、そのOBからもその報道姿勢に対する厳しい批判の書が出版
されているが、本書はその類書ではない。なんといえばいいのだろう、読後感から
いえば、人間らしい人間の立場からの批判である。

これは朝日に限ったことではないだろうが、交通事故で亡くなった被害者の家へ押
しかけ、その母親の話を聞き、写真を撮ってくるなど、仕事とはいえ、通常の人間
ではなかなかできない話が出てくる。大なり小なりの記事捏造、ハイヤーの公私混
同使用、まったく理不尽な上司(--すべてではないにせよ。)等々。--そうい
う「世界」(新聞では報道されない!)、著者17年間の経験がユーモアも織り交ぜ
綴られている。著者は、それを改善されない「体質」と判断し、平成15年に退職の
道を選んだ。


【目次】
ぼくはなぜこの仕事を選んだのか/みじめでまぬけな新米記者/パワハラ支局長/
高校野球報道って偏向じゃないの/記者クラブには不思議がいっぱい/夕刊は不要
どころか有害/朝日の人材開発は不毛の荒野だった/ぼくが初めてハイヤーに乗っ
た日/捏造記事はこんな風につくられる/上祐へのインタビュー原稿がオウムに渡
っていた/「前例がない」の一言でボツ/かつて愛した恋人、アエラ/さような
ら。お世話になりました。


参考までに Amazonの説明を下記しよう。

内容紹介
 元朝日新聞記者が実名で、あの大朝日を内側から描いた問題作。朝日には不思議
 がいっぱい。

 記者クラブの腐敗、社をあげて破る不偏不党の原則、記者たちを苦しめる特ダネ
 ゲームと夕刊の存在……。朝日新聞社の元記者が制度疲労を起こしたマスメディ
 アの病巣を鋭く指摘した問題作。解説=江川紹子

内容(「BOOK」データベースより)
 聞いてビックリ、見てビックリ。朝日の記者生活は「驚き」の連続だった!「捏
 造は当たり前」「偏向は常識」が朝日の社風?!―元朝日新聞記者の苦闘の青春 
 記。


 記者クラブに席を置くことの誘惑と腐敗、社をあげて破る「不偏不党」の原則、
 記者たちを苦しめる「特ダネゲーム」と夕刊の存在…。「知る権利」のエージェ
 ントであるマスメディアの自壊は、民主主義の危機を生んだ。朝日新聞社で十七
 年間にわたり記者を務めた著者が、「職場」として経験したマスメディアの病巣
 を指摘した問題作。


烏賀陽弘道(ウガヤヒロミチ)
 1963年、京都市に生まれる。86年に京都大学経済学部を卒業し、朝日新聞
 社記者になる。91年から2001年まで『アエラ』編集部記者。同誌では音 
 楽・映画などポピュラー文化のほか医療、オウム真理教、アメリカ大統領選挙な
 どを担当した。98年から99年までニューヨークに駐在。92年にコロンビア
 大学修士課程に自費留学し、国際安全保障論(核戦略)で修士課程を修了した。
 03年、退社してフリーランスとなる。『Jポップとは何か』(岩波新書)等。





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