渡部昇一『かくて昭和史は甦る』、J.ホール『日本の歴史』に続き、
満州事変を中心とした「昭和史」関連で、猪木正道『軍国日本の興
亡』(中公新書、H7[1995]/3刊)を読み直す。
本書の副題は「日清戦争から日中戦争へ」である。
普通、「昭和史」は、第一次世界大戦から掘り起こすのが一般的だ
が、本書は日清戦争からスタートしている。「日清戦争から日中戦
争」までの日本史の「教科書」を「詳説」したものと言っていいの
ではないかしらん。
むろん著者の個人的な見解もいささか入っているが、まことに穏当
な、「教科書」的な書きぶりで、世界史的な視野からも見た日本史
だ。満州事変時の若槻礼次郎首相に対する「評価」も多少厳しいも
のとなっている。歴史に if はないけれど、若槻が踏ん張れば、その
後の「流れ」は違っていたかもしれない。
私の記憶では、昭和天皇が「近衛については、猪木が言っているこ
とがかなり的を得ている」と言われたようだ。
歴史の評価はまことに難しいが、猪木正道の書きぶりは大変バラン
スの取れたものと言えるだろう。
本書が発刊され25年を迎えるが、「日清戦争から日中戦争」までの
通史としては、まことに価値ある一冊と言って過言ではないだろう。
引用の史料も興味深い。
猪木正道『軍国日本の興亡』(中公新書) ★×5。
H8(1996)/5/25購入。
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