多田武彦『草野心平の詩から』は、慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団
の委嘱作品である。昭和36(1961)年に畑中良輔先生の指揮で初演されている。畑
中先生の「レパートリー」といえる作品である。
今まで何回か録音され市販されている、人気のある作品でもある。しかし、難易度
という面ではけして易しくない。
以下は同じ楽譜から指揮者、録音年代によって、違った演奏になってくる、よい見
本といえるだろう。
1.畑中良輔指揮/慶應ワグネル(昭和46(1971)年2月録音)
ビクターから発売されていた現代日本合唱曲選の一曲として録音された。昭和45
年の定演では学生指揮者(野添尚三氏)によって演奏されたが、同じメンバーを
畑中先生が指揮したものである。(私も1年生として歌っている。)
ベースの出だし「茫々の~」からしてひきつけられるが、テナー系の輝きもなか
なかいい。「雨」のテナーソロは当時3年の田中良夫氏によるものだが、プロに
劣らない見事なものである。
終曲「さくら散る」のテナー系が歌う「ガスライト色のちらちら影が」にはその
パッションに涙が出てくる。
2.畑中良輔指揮/慶應ワグネル(昭和59(1984)年12月録音)
東芝の合唱名曲コレクションに初めて畑中先生/慶應ワグネルが登場した記念碑
的な録音である。畑中先生がさらに自分のものにされた演奏といっていいだろ
う。
気づかないようなかすかなクレッシェンドなどがたまらない。永田峰雄氏のやや
思い入れの入ったソロは、甘いような、上に抜ける声ですばらしい。終曲では最
後の「まひおちる」がppとなっている。
3.畑中良輔指揮/慶應ワグネル(平成4(1992)年12月録音)
はっきりチェックはしていないが、部分改訂された楽譜による演奏ではないだろ
うか。
1曲目「石家荘にて」の出だしは非常にゆっくりとした、ぎりぎりのテンポであ
る。「白き夜を。月蛾歌はず。」はゾクゾクする。いわゆる「畑中節」を随所に
聴くことができる。2.「天」では「大日輪を」と「を」を入れ、「樹木」を「き
ぎ」ではなく「じゅもく」と歌っているが、作曲者の改訂によるものだろう。
3.「金魚」には過度を排した優しさが感じられる。ソロの福井敬氏は当時まだ20
代かと思うが、既に現在の声を感じることができる。終曲の「まひおちる」はf
で終わっている。
4.北村協一指揮/関学高等部・大学GC、新月会(平成15(2003)年2月録音)
平成15年2月のリサイタルの後で録音されたものである。やや遠目のマイクで、
ホールトーンを生かした録音である。
1.「石家荘にて」はかなりp、実にインテンポの出だしである。サ行、ハ行をハ
ッキリさせた美しさが聴ける。「せっかそう」などの撥音もハッキリしている。
3.「金魚」は難曲だが、ppの美しさはいかばかりだろう。関学はこのあたりが
上手い。テナーソロはいい声だが、あまり私の趣味ではない。「まひおちる」の
滑舌は、120人を超える合唱を感じさせない見事さだ。
なお、2~4の録音はいずれもディレクター伊藤玲子氏、ミキサー池田彰氏の名コン
ビによるものである。
いずれがいいかは趣味による。私自身の「好み」をいえば、3、4も時々聴くが、1
と2を繰り返し聴いている。
ビクター現代合唱曲選のLP
東芝合唱名曲コレクションと関学グリー制作のCD
の委嘱作品である。昭和36(1961)年に畑中良輔先生の指揮で初演されている。畑
中先生の「レパートリー」といえる作品である。
今まで何回か録音され市販されている、人気のある作品でもある。しかし、難易度
という面ではけして易しくない。
以下は同じ楽譜から指揮者、録音年代によって、違った演奏になってくる、よい見
本といえるだろう。
1.畑中良輔指揮/慶應ワグネル(昭和46(1971)年2月録音)
ビクターから発売されていた現代日本合唱曲選の一曲として録音された。昭和45
年の定演では学生指揮者(野添尚三氏)によって演奏されたが、同じメンバーを
畑中先生が指揮したものである。(私も1年生として歌っている。)
ベースの出だし「茫々の~」からしてひきつけられるが、テナー系の輝きもなか
なかいい。「雨」のテナーソロは当時3年の田中良夫氏によるものだが、プロに
劣らない見事なものである。
終曲「さくら散る」のテナー系が歌う「ガスライト色のちらちら影が」にはその
パッションに涙が出てくる。
2.畑中良輔指揮/慶應ワグネル(昭和59(1984)年12月録音)
東芝の合唱名曲コレクションに初めて畑中先生/慶應ワグネルが登場した記念碑
的な録音である。畑中先生がさらに自分のものにされた演奏といっていいだろ
う。
気づかないようなかすかなクレッシェンドなどがたまらない。永田峰雄氏のやや
思い入れの入ったソロは、甘いような、上に抜ける声ですばらしい。終曲では最
後の「まひおちる」がppとなっている。
3.畑中良輔指揮/慶應ワグネル(平成4(1992)年12月録音)
はっきりチェックはしていないが、部分改訂された楽譜による演奏ではないだろ
うか。
1曲目「石家荘にて」の出だしは非常にゆっくりとした、ぎりぎりのテンポであ
る。「白き夜を。月蛾歌はず。」はゾクゾクする。いわゆる「畑中節」を随所に
聴くことができる。2.「天」では「大日輪を」と「を」を入れ、「樹木」を「き
ぎ」ではなく「じゅもく」と歌っているが、作曲者の改訂によるものだろう。
3.「金魚」には過度を排した優しさが感じられる。ソロの福井敬氏は当時まだ20
代かと思うが、既に現在の声を感じることができる。終曲の「まひおちる」はf
で終わっている。
4.北村協一指揮/関学高等部・大学GC、新月会(平成15(2003)年2月録音)
平成15年2月のリサイタルの後で録音されたものである。やや遠目のマイクで、
ホールトーンを生かした録音である。
1.「石家荘にて」はかなりp、実にインテンポの出だしである。サ行、ハ行をハ
ッキリさせた美しさが聴ける。「せっかそう」などの撥音もハッキリしている。
3.「金魚」は難曲だが、ppの美しさはいかばかりだろう。関学はこのあたりが
上手い。テナーソロはいい声だが、あまり私の趣味ではない。「まひおちる」の
滑舌は、120人を超える合唱を感じさせない見事さだ。
なお、2~4の録音はいずれもディレクター伊藤玲子氏、ミキサー池田彰氏の名コン
ビによるものである。
いずれがいいかは趣味による。私自身の「好み」をいえば、3、4も時々聴くが、1
と2を繰り返し聴いている。
ビクター現代合唱曲選のLP
東芝合唱名曲コレクションと関学グリー制作のCD
北村先生は、練習時どちらかといえば4小節ごとにできるまで練習し、そこができたら次に進むやり方でしょうか。福永先生は、壁をペンキで塗るように1回通し、さらに通しながら上塗りを重ねていくような方法だったように思います。どちらがいいとか悪いとかいう問題ではないでしょうが・・・・・・。