盧溝橋事件~南京事件が起きたのは昭和12(1937)年、今から82年
前だ。
ざっと言えば、その年に、盧溝橋事件から第二次上海事変、南京進撃、
日中全面戦争となる。
中国の首都南京が陥落した時は、12月14日(火曜だった)に東京で
40万人の提灯行列が行われた(主催者発表?)。
「82年前」ということは、当時20歳だったとしても、現在は102歳
ということになる。その生存者はほとんどいないだろう。
鈴木明『「南京大虐殺」のまぼろし』のキッカケは、昭和46(1971)
年、朝日新聞に本多勝一の「中国の旅」が連載され、著者がその「真
相」を調べるべく、昭和47年、逗子に住むF氏という南京攻略戦の戦
車隊隊長を訪れたことに始まる。
「百人斬り競争」(→こちら)や「南京事件」(→こちら)関係の論
争の発端となった本かしらん。
鈴木明『「南京大虐殺」のまぼろし』(1973-1983文春文庫)
本書は誤解されるリスクがあるが、「南京(大)虐殺がなかった」と
か「ありえない」(産経新聞が時々その類の記事を載せるけど・・・・・・。)
とは一言も言っていない。
簡単に言うと、「百人斬り競争は本当にあったのか?」という本であっ
て、「南京大虐殺はあったのか?」という内容ではない。
著者は、「あとがき」に「僕の書きたかったことは『南京大虐殺はま
ぼろし』ではなく、・・・・・・」と書いている。
本書の最後には次のようにまとめられている。
もし請われて、僕がどうしても「南京事件」について記述しなけれ
ばならないとしたら、僕はおそらく、次の数行だけを書いて筆を止
めるだろう。
「〔南京事件〕昭和12年12月、日本軍が国民政府が首都南京を攻め
落とした時に起きた。この時、中国側に、軍民合わせて数万人の犠
牲者が出たと推定されるが、その伝えられ方が当初からあまりに政
治的であったため、真実が埋もれ、今日に至るもまだ、事件の真相
はだれにも知らされていない・・・・・・」
(注)本書は昭和48[1973]年大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
現在からみれば、「一石を投じた」という意味では価値があった、と
言えるかもしれない。
岡崎久彦『重光・東郷とその時代』(2001-2003PHP文庫)
歴史学者が書いたものではない。岡崎さんは元外交官だ。
「序章 歴史の真実--現在生きている人間の価値観だけで歴史は書
けない」がなかなかおもしろい。
岡崎さんは、昭和史の専門家(学者)にも目を通してもらって、「そ
んなところでしょう」ということで、書いたという。詳しくは、
本書の執筆にあたってとった手法は、草稿を三章ごとにまとめて数
名の学識あり洞察力のある歴史の専門家の方々に読んでいただいて、
セミナーを開き、「そこまではいえないのではないか」「それには
こういう反対の史料もあるというようなコメントをいただいて、
「まあ、そのあたりが本当のところだろう」といわれるまで書き直
すということである。(本書p32)
南京事件については、「第七章 南京占領」で「南京事件は実在した」
と10ページにわたって記述されている。
学会では、南京事件の「虐殺数」の議論はあるが、「虐殺がなかった」
という学者はいない。
南京事件については、秦郁彦『南京事件 増補版』は、最低限の必読
本。
p275(陸軍士官学校卒業生の親睦団体である)偕行社の機関誌『偕
行』に掲載された「証言<南京戦史>」関連の項目(シロではなかっ
た。)はおもしろい。昭和60(1985)年頃の話。
7/18付ブログもご参照→こちら。
外務省「歴史問題Q&A」もご参照→こちら。
もっともナチス・ドイツの犯罪(ホロコースト=「組織的な」ユダヤ
民族の大量虐殺)と同一レベルの問題ではないのだが・・・・・・。
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