かぜねこ花鳥風月館

出会いの花鳥風月を心の中にとじこめる日記

ゴジラに絶望せず、早春の復活祭を待とうではないか

2024-01-04 18:37:55 | 日記

正月二日の夜に放送されたNHKFMの「まろのSP日記 第27集」を「らじるらじる聞き逃し」できょう午前に聴く。

この番組は、N響コンサートマスターの愛称「まろ」こと篠崎史紀(しのざきふみのり)さんが、ご自身が蒐集しているなつかしSPレコードに刻まれたヴァイオリン曲などを聴かせてくれる番組で、盆正月などに不定期に流されている。

クライスラーやハイフェッツなどのオイラの生まれるずっと以前に刻まれたSPレコード盤の名盤が、NHKスタジオでいちいちゼンマイをまいて、いちいち針を交換して、あのラッパがついた蓄音機により再生されるのであって、ワレワレは残念ながらその音をラジオを通して聴くわけだが、なんともノスタルジックなノイズの微かな音ととも流れるその再生音は、聴く者をはるか古き良き夢の国へ誘う。

SPレコードは賢治さんの生きていた大正から昭和初期に隆盛を極めたのであって、もしかして賢治さんもこのレコードたちを聴いたのだろうか。

この愛すべき番組で、きょうはトーシャ・ザイデルというヴァイオリニストが奏でるグリークのソナタ3番の第2楽章(ソナタⅢー2)が流れた。

この楽章のヴァイオリンが奏でるメロディーは、もう早春の匂いそのものだ。森を覆った深い雪が、やがて春の淡い陽光に少しづつ融け、微かに水音が聞こえてくる、そんな風景が眼に浮かぶような音楽。まさに北欧育ちのグリークもそんな風景を頭に描きながら作ったとしか思えない。

この音楽を聴いて目を閉じると、青葉の森にやがて三月になると芽生えるであろうピンク色の「カタクリ」たちの姿が目に浮かび、その花の香りに誘われてやってくるスプリング・エフェメラルの仲間の「ヒメギフチョウ」さんたちの姿も眼に浮かぶ。

オイラは、12月の最終日、年の瀬に聴く音楽としてラフマニノフのヴォカリーズ(とくにアンナ・モッホで)をあげたが、その音楽は断崖の果てに立ちながら風に打たれるような「絶望的」とまでいいたくないが「虚無的」で力の抜ける音楽の極みだ。

だが、どうだろう。このグリークのソナタⅢ-2はヴォカリーズの対極にあって、そこはかとない再生の音楽に聴こえないだろうか。目を瞑れば花たちが再び現れ、チョウたちがまた花にやってくるという春の復活劇をしずかに祈るような音楽に聴こえないか。ヴォカリーズが「絶望」ならソナタⅢ-2は「希望」。ヴォカリーズが「死」らソナタⅢ-2は「再生」。

2024年、年明けに起きた二日連続のゴジラ襲来にもう心が折れていた矢先に、まろさんは、いい「復活再生への触媒」をオイラにプレゼントしてくれた。

そうだ、もう1、2か月もすれば、マンサクもオウレンもカタクリたちも目を覚ますのだ。待とうではないか。再び春がやって来て、再生した生きものたちが沈みがちな心を慰めてくれる日を。遠くはないぞ。

 

トーシャ・ザイデルのヴァイオリンでグリークのソナタ3番楽章(SPレコード録音)

Dniel Kurganov さん提供Youtube

 

 

 

   【2023年早春・青葉の森の妖精たち】

  

 

 

  

 

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