ケン坊のこんな感じ。
キーボーディスト、川村ケンのブログです。




今の日本でには、皆さんが時代劇や映画なんかでご覧になって来たでありましょう、あの「侍」は見かけることができません。

いまから130年も前のことですが、明治9年に「廃刀令」という法律が実施されて、いわゆる「二本差し(大小の刀を差していること)のお侍さん」は居なくなりました。ですから、僕をはじめ、現存している日本人は、実は誰も「侍」を見たことが無いんですよ

僕、ゴールデンウィークの始めに、黒澤明監督の「羅生門」という映画を観てからというもの、完璧に黒澤ワールドに嵌(はま)っています

あれから、仕事の合間を縫いながら、「天国と地獄」「酔いどれ天使」「一番美しく」「どですかでん」「どん底」「用心棒」「椿三十郎」「蜘蛛巣城」「隠し砦の三悪人」と観てきました(順不同)。あと、過去に観ていた「生きる」「七人の侍」「影武者」「乱」「夢」なども、これを期にまとめて観返そうと思っておりますし、他にも未見の黒澤映画は沢山ですから、まだまだ楽しみは続くということで、これは実に嬉しいですねー。最後の一本は、一生観ないでおこうかな(笑)。

そのどれもが、日本映画のみならず、世界の「映画の表現における原点」たる映画ばかりということで(例えば黒澤映画があの「スターウォーズ」シリーズに、もの凄く大きな影響を与えているのは有名ですよね)、とっても興味深く観ております。あ、別に特別難しくなんてなくてですね、純粋に、本当にエンターテイメントとして面白いんです。白黒と、やや聴き取りづらい音声にさえ慣れればね(字幕、付いてます)。

現代劇や不思議な気分になる話、時にはあまりに人間の真を描くが故に、ホラーめいた要素も多くなる(人間が一番怖い、ということですね。)黒澤映画ですが、僕が今のところ特に興味深く、かつ楽しく見ているのが「侍」を描いた、時代劇映画です。(最初の一本なら「用心棒」がお勧めです。この映画の三船敏郎のカッコよさと言ったら、もう、ヤッばいです。)

本物の「侍」を描くために、黒澤監督は役者に、今では信じられないような数々の無茶難題をふっかけたと言います。そして、それらをクリアした、黒澤組の俳優達のリアリティ溢れる名演技の数々。実は本物の侍を知らない僕等が、「うむ、実際、きっとこうだったに違いない」と、思わず納得するような描き方をするんですね。歩き方、喋り方、刀の扱い方、戦い方、倒れ方、死に方・・・。ロケ、セットも素晴らしいです。そして、食べ物や、その食べ方にもご注目です。本当に、凄いです。

今の映画、特に時代劇で、黒澤映画の影響を受けていない映画はゼロだと断言してよいと思います。現在の商業音楽の世界に例えるなら、黒澤明さんという人は、「一人ビートルズ」みたいなものかもしれませんね(笑)。

さて、今日はおそらく大多数の方がほとんど興味の無いことを、長々と書きました(笑)。本当は一本ずつ見所などを解説でもしたいところですが、止めときます(笑)。まぁ、世界遺産的価値のある監督と映画に関することなので、日本人の皆さんには、是非「なんか凄いらしい」ということだけでも、心の隅に、どうか(笑)。

写真は街で見かけた、たぶん来日したばかりの、外国人さん。キョロキョロしてましたし、このあと地図を片手に人に道を聞いていましたのでね。

まず彼の持っているバッグにご注目。「蝶のように舞い、蜂のように刺す」、で有名なかの伝説的ボクサー「モハメド・アリ」がデザインされていますね。そしてここまで日本のデザインなのに、日本人はまず絶対に着ないという、日の丸シャツ(余談ですが、アメリカ人はアメリカ国旗のデザインを着ますよねー)。僕は、思うんですけど、彼はきっと、ぶどう科です。・・・あ、いや、武道家です。日本に来た目的は・・・きっと、ぶどうの修行です。・・・いや、全然違うかもしれません(笑)。

一度でも武道を志せば、必ずやきっと誰もが憧れるでありましょう、侍。(武道とは武士道、ですからね。)

刀を持った姿形そのままの侍は、残念ながら、もはや黒澤映画の中にしか居ません。(あ、ちょっと前にギターを持って活躍なさってた(なさってる)侍は一人いらっしゃいましたが(笑)。)

でもね、ちゃんといるんですよ、心に「侍」を持った日本人は、まだ。えぇ、実はそこかしこに

え?「大和撫子」ですか?はい、そりゃあもう、・・・勿論沢山居ますとも。ねぇ

・・・日本で、よい出会いをして帰って貰いたいものです。

ではー。

---追記。---

今日のブログを書いたせいか、いや、間違いなく書いたせいでしょう(笑)、どうしても「七人の侍」が観たくなり、夜半過ぎから観始めてしまいました。かのスピルバーグ監督が、映画の撮影前や、行き詰った時には必ず観返す「原点」としての映画がこれなんだそうです。

映画は、手に汗握りながらも、涙あり、笑いありの一大エンターテイメントであります。しかし、一点。この映画はタイトルこそ「七人の侍」ですが、その実、「百姓達と七人の侍」と言っていいほど、乱世の貧しかった農民達の生活が時に痛々しく、時に活き活きと描かれております。僕は、こういった迫真の生活感というものに、とても惹かれるんです。

「どん底」「どですかでん」などでもそうですが、黒澤監督の貧しい人々に対する厳しく、それでいて暖かな、しかし最終的にはそのどちらの感情にピクリとも流されることの無いようなシュールな、言い換えればリアルな視線、視点、描き方は、これぞまさに特筆に価する点だと思っています。深く語れる程あまり良くは知らないので申し訳ありませんが、例えば「自転車泥棒」などのフランス映画にも近い、どうにもやり場の無い、どうしようもないやるせなさ、を感じます。

現代では「差別だ」とか何だと、題材として扱うことそのものが許されないようなタブーだったりすると思いますが、それ故、黒澤監督の時代ではまだそこまで扱うことが目くじらを立てられるほどは問題視されてはいなかった(なぜなら、世間一般に「当たり前」だったからでしょう)からこそ、僕ら飽食の現代人にとっては、とても貴重な「現実はこんな暮らしぶりだったんだよ。こんだけ貧しかったんだ。そして、こんだけ明るかったんだ。これが君達のほんの数世代前の世界、日本の本当の歴史、現実なんだ」ということを突き付けてくる、大変興味深い映像がこうして残されているのです。

僕は、映像や文献の如何を問わず、歴史、特に近史を知ることは、僕達の現代とこれからを考えるにあたり、とても重要なことだと思っています(って偉そうに言う程、取り立てて勉強してるわけでもないので少々口幅ったいのですが)。

あー、話が、少々難しくなりました(笑)。

しかし、ちょっと長い映画でした。まぁ、観る前から、わかっていたのですけどね。・・・「休憩(という字幕がDVDでも本当に現れる)」付の、全207分。

でも、前半でワクワクして、後半でドキドキして、あっというまにホラ、薄っすらと空は明るくなり。あぁ、遠くで例のバイクの音がします(笑)。

ではー。



コメント ( 26 ) | Trackback ( 0 )