【庭の片隅の常備薬、山菜として食用にも】
半日陰の路地などにひっそり咲くドクダミは、時にはっとさせられる美しさを放つ。花びらのように見えるのは葉の変化した総苞片。中心の黄色い花穂に無数の花を付ける。1個の花は雌しべ1本と雄しべ3本から成り、花びらもガクもないため〝裸花〟と呼ばれる。特有の臭いの正体はアルデヒドという精油成分。強い抗菌作用を持ち、ぶどう状球菌や白癬菌など細菌の活動を抑えてくれる。
ドクダミ科ドクダミ属の一属一種の固有種。一属一種の植物にドクダミのほかイチョウ、シラネアオイ、コウヤマキなど。一重が一般的だが、八重咲きのヤエノドクダミ、斑入りのゴシキドクダミ(別名カメレオン)などもある。和名のドクダミは「毒矯(だ)め」または「毒痛み」が転訛したものといわれる。古くからゲンノショウコやセンブリと並ぶ薬用植物として、家庭の常備薬として庭の片隅に植えられることも多かった。
葉は乾燥し煎じて飲むと、利尿や解熱、解毒、血圧降下、動脈硬化予防などの働きがあるという。腫れもの、にきび、水虫、傷口の止血などには生葉をすりつぶしたり火に炙ったりして貼る。蓄膿症には生葉を鼻に詰める。数え切れないほどの薬効があるため「十薬」や「重薬」の異名を持つ。古くから山菜として食用にもなった。若葉はてんぷらや胡麻和え、油炒めに、根はきんぴらや煮物に。
口筆画家、星野富弘さんがドクダミの絵にこんな詩を添えている。「おまえを大切に摘んでゆく人がいた 臭いといわれ きらわれ者のおまえだったけれど 道の隅で歩く人の足許を見上げ ひっそりと生きていた いつかおまえを必要とする人が現れるのを待っていたかのように おまえの花 白い十字架に似ていた」。星野さんの描く花の詩画集には、生命への限りない優しさがあふれていますねぇ。